2024年2月5日 5時00分

「ドミサイド」と戦争

人間の集団殺害はジェノサイドだが、建物を兵器などで大規模に破壊するのはドミサイドだという。ラテン語で家を意味する「ドムス」からの造語で、住宅などを広範囲かつ意図的に破壊する行為を指す。

　家とは何か。住むだけではなく、そこから通学や通勤をし、買い物へ行き、帰ってくる場所だ。家が集まれば地域社会ができる。戦争や紛争で破壊されると避難を強いられる。家族が離散し、共同体が失われることもある▼イスラエル軍とイスラム組織ハマスによる大規模な戦闘が始まってから、４カ月（四ヶ月、よんかげつ）近くになる。ガザ地区では約２万７千人の市民が亡くなり、人口の８割を超える１９０万人が家を追われた。最近、欧米メディアのガザに関する報道では「ドミサイド」という言葉が目につく▼人間の集団殺害はジェノサイドだが、建物を兵器などで大規模に破壊するのはドミサイドだという。ラテン語で家を意味する「ドムス」からの造語で、住宅などを広範囲かつ意図的に破壊する行為を指す▼国連によると、先月半ば時点でガザでは約７万戸の住宅が全壊し、一部損壊も２９万戸以上にのぼる。住宅以外でも、学校や病院、イスラム礼拝所（れいはいしょ）、農場など、あらゆる民間の建造物（けんぞうぶつ）やインフラ施設が破壊された。イスラエル側は「ハマスがいるから」破壊が必要なのだと主張する▼国際司法裁判所は先月、ガザでのジェノサイド行為を防ぐようイスラエルに命じた。ドミサイドの方は国際法で定義されていない。犯罪として国際人道法などに明記し、責任を追及できるようにすべきだとの声が出ている▼ロシアによるウクライナ侵攻やシリア内戦でもドミサイドが行われた。市民が帰る家を、戻る故郷を失わせる行為は決して許されない。