2025年1月10日 5時00分
ファクトチェック
地味な仕事といえば、確かにそうなのかもしれない。新聞社にいる校閲記者たちは、記事を書かない新聞記者である。連日連夜、締め切りギリギリに出てくる原稿にも目を通し、間違いがないか、ひたすらチェックする▼成果が見えにくい仕事なので、若い記者には悩む人もいる。「最後の砦(とりで)」とされるけれど、いったい何を守っているのかと。でも、誤りがあれば、深く傷つく人がいる。ひどく困る人もいる。信用を保つためにも、いなくてはならない「縁の下の力持ち」である▼もちろん、確認といっても、限られた時間でのことだ。ミスはある。誤報は出る。ただ、間違いがわかれば、訂正を出す。無数の言葉が無碍(むげ)に飛び交うSNSと、古いメディアと呼ばれる新聞社の大きな違いだろう▼米メタ(旧フェイスブック)が、投稿内容の事実関係を確認する「ファクトチェック」を米国で廃止するという。保守派から、投稿の管理は「検閲だ」といった批判を受け、方針転換したらしい▼「表現の自由」と「有害投稿への対応」のバランスは確かに難しい。だが、メタの利用者は世界で、30億に上る。巨大メディアの影響力と責任の大きさを思うと、危うさを感じてならない。もうすでに、SNSには偽情報があふれ、民主主義を激しく揺さぶっているのだから▼話を戻そう。かくいう当欄もまた、何人もの記者の確認を経て、いま、あなたという読者の目に触れている。自戒と自負を込めて言えば、これが、私たちの仕事である。