2023年9月19日 5時00分

チームのバランス

 永田町(ながたちょう)には、普通と異なるてんびんが存在するようだ。先週行った内閣改造(かいぞう)の人事について岸田文雄首相は「適材適所(てきざいてきしょ)で、老壮青(ろうそうせい)、男女(だんじょ)のバランスとなった」と話した。釣り合いや均衡を意味するバランスはラテン語で「二つの皿」、てんびんが語源とされる▼副大臣と政務官の計54人に女性がゼロだと指摘された首相は、「チームとして人選を行った」と説明した。人事全体をみて欲しいのかと、閣僚と首相補佐官を加えて内訳(うちわけ)を数えてみた。まず、男女比(だんじょひ)は71対7。このてんびんは、大きく傾いている▼スポーツで強いチームは、正選手を目指す控えの層が厚い。女性議員が少ないなら候補者から増やすしかない。英国初の女性首相だったサッチャー氏は「その日を切り抜ける駆け引きより、信念が政治では重要だ」と言ったそうだ。強い意志で育てなければ、チームは強くならない▼将来を担う(になう)若手(わかて)はどうか。78人中、30代は3人だけで、「老壮青」もかなり傾いて見える。派閥や当選回数の分銅(ぶんどう)で調整したバランスだから、これでいいのだろうか▼閣僚人事(じんじ)では、「女性ならではの感性や共感力」を期待する首相の発言があった。5人の女性大臣(だいじん)には意識せず、自分らしく活躍してほしいと思う。そもそも復興や外交で、どう感性を発揮してもらいたいのかも不明なのだ▼赤絨毯(あかじゅうたん)にネクタイ姿が並んだ記念写真を眺め、改めて首相のバランス感覚に不安を覚えた。もしかしたら、支点が中心からずれているのかもしれない。