2023年9月25日 5時00分

栗拾いボランティア

 栗拾いのボランティアを募集(ぼしゅう)しています。栗林(くりばやし)の持ち主たちの高齢化や人手不足(ひとでふそく)で収穫が難しくなっています。1組2キロまでは、どうぞ無料で持ち帰ってください――。そんな取り組み(とりくみ)があると聞き、山と海に囲まれた佐賀県の伊万里市(いまりし)を訪ねた▼「来た人はみんな喜んでくれて。ありがとうって言われるのはいいですね」。発案者で、同市黒川町まちづくり運営協議会の石丸利太(いしまる とした)さん(73)は日に焼けた顔を綻ばせ(ほころばせ)、うれしそうに言った▼ボランティア募集の反響は予想以上に大きかったという。毎日数組を受け入れ、栗拾いをしているが、希望者が多すぎて、すでに予約は満杯だそうだ。募集はもう締め切った▼昨年、管理を任された木は約30本だった。石丸さんは自分らで収穫し、高齢者施設などに配った。だが、今年は「面倒を見てくれ」と所有者に頼まれた木が約140本に増え、手が足りなくなった。「フードロス削減と、多くの人に栗拾いを経験してもらおうと思いました」▼案内してもらい、栗林を歩いた。緑色の毬栗(いがぐり)が風に揺れ、地面(じめん)にも棘(とげ)いっぱいの毬(いが)がいくつも転がっている。いまや各地で似たように、人の手が入らなくなる土地がたくさんあるのだろう。そんな想像をすると、何だか複雑な気持ちになった▼毬栗(いがぐり)を一ついただき、持ち帰った。毬の裂け目から、ツヤツヤとした三つの栗の実が、くっと顔を出している。まるで秋の訪れを無言で主張するかのように。〈初栗に山上の香もすこしほど〉飯田蛇笏(いいだ だこつ)。