2023年5月17日

LGBTと学校教育

 性的少数者への理解を広める目的でも、これほど反発(はんぱつ)されるとは。自民党がきのうまとめた「LGBT理解増進法案」は、批判的な一部の保守派議員らの意見であちこちが修正された。目に付いたのは、学校教育に関する発言である▼議員の一人は「お伽噺(おとぎ話)の王子様は男性と結婚しましたというような教材」が学校で使われることに、真顔で懸念を示した。「普通に考えたら、ちょっと行き過ぎた(ゆきすぎた)教育」でまかりならん(関係しない)というわけだ。では、実際に使われている道徳教科書はどうかと開いた▼たとえば、ある中2の「公正、公平、社会正義」の項目はこう始まる。「性のあり方は、男・女の二つだけではなく、人の数だけあります」。そして、「好きになる性」が異性であるのが「普通」とされたら、性的少数者が悩むことがあると書く▼別の社の中3では、体の性、心の性、好きになる性、表現する性を丁寧に説明している。欧米などでも学ぶ四つの性だ。来春から使われる小学校の教科書でも、保健や道徳で「性の多様性」に触れたものが目立つ▼いずれも現実的で、実社会(じつしゃかい)で役立つ(やくだつ)知識が得られる内容だ。制服のスカートを嫌がる女子生徒や、不登校のロングヘアの男の子の実例もあった。浮世離れ(うきよばなれ)した議員らとは無関係に、教育現場では違和感を持つ子どもと向き合ってきている▼きょうは「LGBT嫌悪(けんお)に反対する国際デー」だ。大人は子どものお手本で、偏見があれば言葉や態度にあらわれる。反面教師にはなりたくない。