2023年5月2日
統一地方選で吹いた風
5年前の春、女性議員の少なさに危機感を抱いた大学教授らが初めて養成講座を開いた。当時、地方議会での女性比率は1割強。「ジェンダー平等(びょうどう)な政治を」の声に、20~30代を中心に27人が集まった。ハラスメントや孤独な子育て、低賃金などでみな、生きづらさを感じていた▼学校や仕事帰り(しごとかえり)の平日夜(へいじつよる)に2時間ずつ、全5回。やりたい政策を語った初回(しょかい)は「格差のない社会」「夢のある街づくり」など抽象的(ちゅうしょうてき)な表現が目立った。もっと具体的に、法律も勉強して説得力を――。元地方議員らを招いた指導で、力強さが増した(ふやした)▼最終日(さいしゅうび)の模擬演説(もぎえんぜつ)では、全員が堂々と政策案を語るまでになった。SNSでの性被害相談や、空き家を利用した子育て支援などには講師側も唸った(うなった)。「政治を変えたいなら地方議会からだと知った。目から鱗(うろこ)です」と話す姿が印象的だった▼先月行われた統一地方選の後半戦で、女性が躍進した。市議選で初めて2割を超え(こえ)、4市区町では半数を超えた。あの講座の卒業生の名前を見つけ、夜の演説練習を思い出した▼地方議会で女性は増えたが、歩みは遅い。前半戦の知事選と政令指定市長選では当選者全員が男性だった。候補者男女均等法(だんじょきんとうほう)の施行(しこう)から5年になるが、政党(せいとう)の動きは鈍い。かけ声(かけごえ)だけでなく、本気で取り組むべきだ▼養成講座(ようせいこうざ)や政治塾に通う女性の多くは「地盤(じばん)、看板(かんばん)、鞄(かばん)」がない。組織(そしき)と知名度と資金がなくても、世襲(せしゅう)でなくても、勝負できる選挙文化に変わる時期ではないか。