2023年6月3日 5時00分

大学生がはじめた無料塾

 きょう、学校で何があった?そんな、よくある問いかけも、あえてしないのだという。なぜなら、誰もがみんな、学校に行っているわけではないから。学校に行かないことを気にしている子もいるから。きょう、何があった?それでいい▼中央大学4年の吉沢春陽(よしざわ はるひ)さん(21)はいま、そんなことをいつも考えながら「かわさき芽吹塾(めぶきじゅく)」の代表を務めている。経済的に困窮する家庭の子どもや、不登校の子ら40人の中高生に無料で勉強を教える塾である。講師はすべてボランティアの大学生。運営は寄付などで成り立っている▼始めたのは2年前。日本の子どもの7人に1人が貧困に苦しんでいる。そう書かれた新聞記事を読んだのがきっかけだった。「自分は恵まれて(めぐまれて)いたんだと気づきました」▼授業の様子を見せてもらった。土曜の夕方、川崎市にある公共施設の一室に、若者が集まってくる。講師と生徒はほぼ一対一。「おー、いいねえ」「いえー」。友達同士のような会話が聞こえる。何やら(なにやら)楽しそうだ▼いまや無料の塾は全国にある。学校の授業についていけない。お金のかかる塾に行けない。「居場所」がない。そんな子どもたちの大切な学び場だ。でも、では、そもそも学校って何なのだろう。素朴な(そぼくな)疑問も頭をよぎる▼「やる気(やるき)があるから、みんな学力の伸びがすごいんです」と吉沢さん。別れ際に尋ねてみた。いま何が大事だと思いますか。「人情と、思いやりです」。はにかんだ笑顔と一緒に、そんな答えが返ってきた。


子どもの7人に1人が貧困状態 18年調査で高い水準に

 2018年の子どもの相対的貧困率が13・5%だったことが17日、厚生労働省が3年ごとに発表する国民生活基礎調査でわかった。前回15年調査から0・4ポイント改善したが、依然として子どもの約7人に1人が貧困状態にあり、国際的に高い水準だ。

<相対的貧困率>世帯の可処分所得(手取り)などをもとに子どもを含めた一人一人の所得を仮に計算し、順番に並べた時、真ん中の人の額の半分(貧困線=18年調査では127万円)に満たない人の割合。子どもの相対的貧困率は、貧困線に届かない17歳以下の割合を示す。

 調査は3年おきで、今回は約3万2500世帯の所得を調べ、有効回答率は68・51%だった。

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