2023年6月22日 5時00分

「丸刈り」激減?

 私という存在はいったい、どこまで私なのか。私の眼鏡は私なのか。着ている服はどうか。そして何よりも、私の髪の毛は私の存在の一部ではないのか。遠い昔、10代のころ、部活動の先生に「丸刈り」を強いられ、嫌で嫌で悩んだことを思い出した▼野球部員の頭髪(とうはつ)は丸刈り――。そんな取り決めを持つ高校が、激減しているそうだ。時代は変わったか。日本高野連と本社による全国調査で、5年前の76・8%から、26・4%にまで減ったという▼確かに、甲子園の試合を見て、近ごろは髪を伸ばしているチームもあるのだと気づいてはいた。だが、そこまで大きな変化が生じていたとは。正直言って驚いた。この5年で、いったい何が起きたのだろう▼「丸刈りの強制は人権侵害と言われかねない。問題になったら困るとの意識が広まったのでしょう」。筑波大の清水諭(きよみず さとし)教授はそう話す。行きすぎた指導への厳しい視線も受け、変容の波が押し寄せているということか▼ただ、強制がなくても、高校野球をやたら精神論で語る風潮や、同調圧力で丸刈りを迫る空気が消えたわけではない。「スポーツとは何か。どんな髪形(かみかた)がいいのか。大事なのは生徒たちが自分で考えることだ」と清水教授▼今年もまた、熱き夏の球音が聞こえ始めた。プレーをする側も、応援する側も、高校野球というスポーツそのものを、存分に楽しみたい。髪の毛の長短(ちょうたん)など、寸分(すんぷん)たりとも関係あるまい。いまや薄さの目立つ我が頭部(とうぶ)をなでながら、強く思う。