2023年6月23日 5時00分

沖縄慰霊の日

 「ガマフヤー」。那覇市に住む具志堅隆松(ぐしかた たかまつ)さん(69)は、そう名乗っている。沖縄の言葉だ。旧日本軍が陣地に使った、自然の壕(ごう)「ガマ」を掘る人という意味である。ボランティアとしてもう40年以上、沖縄戦で亡くなった人たちの遺骨を探してきた▼「いまでも骨は見つかります」。具志堅さんはそう言った。恥ずかしながら、ハッとした。今月初め、沖縄を訪ね、多くのガマが残る糸満市(いとまんし)の丘陵を案内してもらった▼ガジュマルの枝が絡み合う原野(のはら)には、いくつもの壕が暗い口を開けていた。ヘッドライトをつけ、ゴツゴツとした石灰岩(せっかいがん)の隙間を、はって進む。ヘラで丁寧に地面をなでていく。しばらくして「これです」。明らかに骨だと分かるものが見つかった▼遺骨は「物言わぬ証言者(silent witness)」だという。銃撃されたか。火に追われたか。でも、「戦争の実相って、結局、殺されるってことですよね」。ぽつりと具志堅さんがつぶやく。ぐっと胸を突かれた▼きょうは沖縄慰霊の日。戦後78年、失われた多くの命に対し、この国はどれだけ本気に哀悼(あいとう)を示してきただろう。沖縄だけでなく、いまだに家族のもとに帰れない遺骨が、幾多も野に眠ったままなのはなぜだろう。あの戦争はまだ、終わっていないのではないか▼具志堅さんはこうべを垂れ、静かに遺骨に語りかけた。「みなさんの苦労、恐怖、絶望を少しでも、いまを生きる人に伝えたいと思います。もう二度と戦争を起こさないために」。目を閉じて、そっと、手を合わせる。