2023年12月16日 5時00分
二刀流(にとうりゅう)と一角獣(いっかくじゅう)
米大リーグのドジャースに移籍した大谷翔平選手は、地元メディアに「ユニコーン」と表現されることが多い。伝説上(でんせつじょう)の一角獣に、前例のない二刀流で輝く姿が重なるのだろう。大勢の記者が集まった昨日の入団会見に、改めて注目度の高さを実感した▼人気スポーツライターのジョー・ポズナンスキーさんは今秋に出した『野球を愛する理由』(未訳)で、野球史上における特別な50の場面を紹介した。「ショウヘイ」と題された章は、WBC決勝で最後のトラウト選手を三振に仕留めた(しとめた、討ち取る)瞬間だ。「ゾクゾク。鳥肌」。簡潔な文から、筆者の興奮が伝わってくる▼米紙への寄稿によると、ポズナンスキーさんが最も苦労したのはこの章だったそうだ。WBC後に全部書き直したのは、大谷選手が常に「自己最高」を更新しているから。「私は今後10年、彼を書き直し続けるかもしれない」という▼約150年の大リーグ史をみれば挑戦の連続だった。今年から設けた投球間(とうきゅうかん)の時間制限は、スピード感を求めるファンの要望に応えたものだ。不振が続き、統計学を用いた最新の評価手法で巻き返したチームも▼大谷選手に関心が集まるのは突出(とっしゅつ)した記録や桁外れ(けたはずれ)の契約金はもちろんだが、高みを目指し続けているからだろう。昨日の会見でも「常に挑戦したいなと思っている」と話した▼伝説のユニコーンは角(つの)で川や湖(みずうみ)を浄化し、動物たちを守ったという。彼はこれからも野球界に新風(しんぷう)を吹き込み、人気を広げる力になるか。試合は続く。
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大谷アンドトラウト
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大谷翔平のドジャース入団式