2023年10月14日 5時00分
細田議長の記者会見
この国の難解な方言の一つに出雲弁(いずもげん)がある。よく知られたところでは、「ありがとう」を意味する「だんだん」だろうか。では、「しぇたもんだわ」はどうか。地元の人にそう言われ、「あきれたもんだね」との意味が分かるのはかなりの通に違いない▼島根県選出の国会議員、細田博之(ほそだ ひろゆき)氏はかつて、国会質問で「出雲弁を宣伝したい」と唐突に語ったことがあった。さぞ方言に関心があるのだろう。きのうの衆院議長の辞任会見について、覚えたての出雲弁であえて言わせてもらえば、まさに「しぇたもん」である▼旧統一教会と自民党の関係のキーマンと言われながら、公開の場での説明から逃げ回ってきた人物だ。教団のイベントに幾度も出席し、広告塔になったとも指摘されてきた。会見で何を言うかと注目したが、被害者への気持ちを問われても「私は一切、無関係だ」▼その言葉の何と冷たい、いや、何と「ちべて」ことか。セクハラ疑惑にも「本当にあったのなら言って欲しい」。被害を訴える女性の証言が報じられているのに、まるで聞こえないかのようだ▼細田氏の発言はこれまでも、市井(しせい)の人の感情を逆撫で(さかなで)してきた。「それが国民の程度かもしれない」といった、人々を見下す(みくだす)ようなものもあった。明らかに感覚がずれている▼政府は教団への解散請求をした。これで幕引きとばかりに、語らぬ細田氏にホッとし、「だんだん」と言いたい政治家がどこかにいないか。深い闇の解明を、有耶無耶(うやむや, あいまい)にしてはならない。
出雲方言(いずもほうげん)、出雲弁(いずもべん)は、島根県の旧出雲国における日本語の方言。雲伯方言に属し、「西のズーズー弁」としても知られている。