2023年10月27日 5時00分
ガザの子どもたちの死
自らが信じる「正義」のためならば、不正義を行ってもいいのだろうか。もしも、そうだとしても、悪を打ち倒すための不正義はどこまで許されるのか。幾多の先人が考えた普遍的な問いがいま、脳裏にこびりつき、離れない▼パレスチナ自治区ガザでの犠牲者が、増え続けている。2千人を超える子どもが殺されたという。数で死者を語るべきではないけれど、あまりに不条理な現実に言葉を失う。彼らにいったい何の罪があったというのだろう▼イスラエルに、自らの信じる正義があるのは分かる。多くの同胞が無残に殺された。捕らわれたままの人質たちもいる。だが、だからといって、これほど多くの無辜(むこ)の命を奪っていいものか▼ネタニヤフ政権への支持を鮮明にするバイデン米大統領でさえ、「激情にのみ込まれてはいけない」と口にする。同時多発テロと、その後のアフガン戦争を振り返って、「米国は正義を得た。しかし、過ちも犯してしまった」▼正しさを掲げた不正義がいったん走り出せば、その拡大に歯止めをかけるのは容易でない。米ハーバード大教授を務めたマイケル・イグナティエフ氏は、自著『許される悪はあるのか?』に書いた。「最も困難なのは善か悪か(ぜんかあくか)の選択ではなく、悪かそれ以上の悪かの選択である」▼ハマスに襲撃されたイスラエルの住民が本紙に語っていた。「戦争はしたくない。生きていたいだけ」。そんな幾つもの言葉を重く受け止めながら、強く思う。停戦をすべきだ。いますぐに。