2023年四月二十二日
パパとファファとハハ
新年度から新たに外国語を学び始めた方も多いと思う。気休めにはならないだろうが、語学習得を趣味とする欧州人の友達によると「日本語の文字体系は世界一難しい」そうだ。ほら、と示された新聞の見出しは「チャットGPT 利用ルールの議論急げ」▼ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字。4種類の文字を使い分ける言語は、世界でも類がないとされる。話す方はどうかと、千年以上の歴史をたどった『日本語の発音はどう変わってきたか』(釘貫亨〈くぎぬきとおる〉著)を読んだ▼録音がない時代の音声を特定するのは、なぞ解きのようで面白い。文字から音を得たのは、言語学者らによる努力のたまものだ。中国の音韻(おんいん)の古い資料や、ローマ字で表記したキリスト教宣教師の文献などをもとに研究を重ねてきた▼たとえば、奈良時代のハ行は「パピプペポ」で、平安時代は「ファフィフフェフォ」だったという。母はパパからファファへ変わり、18世紀前半にハハとなった。サ行も違い、「笹(ささ)の葉」は「ツァツァノパ」だったそうだ▼同著によると、音声は伝えたい情報量が同じならば省エネの方へ向かうのだとか。奈良時代には「ア」と「エ」の中間のような音などもあり母音(ぼおん)は八つだったが、うち三つが消えた。小さなきっかけで地滑り的に変化することがあるのだ▼発音とはかくもダイナミックに変わるのか。驚きつつも、語学で苦労してきた身としてつい、思ってしまった。昔のままだったら、微妙な外国語の発音もできていたかな。
きやすめ 0【気休め】
- ▸ その場限りの安心感。一時だけ安心を与えるような言葉・考え・行為。「一時の―」「―を言う」
- ▸ 気休めを言わないでください。Don't say things just to console me.
- ▸ あの薬は単なる気休めにすぎない。That drug is mere placebo(e) s. (!placebo | pləsíːboʊ | は「気休め薬」)