2024年1月3日 5時00分
元日の地震(がんじつのじしん)と日本航空516便衝突炎上事故
親戚や友人と新年を祝っていた人もいただろう。家族と過ごす旅先だったかもしれない。元日の夕方、石川県能登地方を震源とする大きな地震が起きた。北海道から九州まで、津波の到達範囲は日本海側に広く及んだ。テレビ画面に「津波危険」「にげて!」の文字が繰り返し映り、胸が苦しくなった▼冬の日没(にちぼつ)は早い。暗いなかで避難を強いられ、寒さに耐える苦痛はいかほどか。停電や断水が続き通信状況も悪いという。倒壊した建物に閉じ込められ、助けを待つ人もいる。一刻も早く救出されることを祈る▼気象庁によると、今回の揺れは「従来より広範囲」だという。広く激しい地震の爪痕(つめあと)は、一夜明けてくっきりと見えてきた。道路は地割れ(じわれ)で抜くれあがり(めくれaがり)、山肌(やまはだ)はむき出しに。趣(おもむき)のある石垣(いしがき)や家屋(かおく)も多く崩壊した▼輪島市(わじまし)では大規模な火災がおき、有名な朝市の一帯も焼失(しょうしつ)した。コロナ禍の一昨年(おととし)も約20万人が訪れた観光地だ。以前に訪ねたとき、野菜や小物を売る気さく(きさく、friendly)なおばちゃんたちについ財布のひもが緩んだ▼〈雪深くなれば葱(ねぎ)売る小母(おば)さんもいつもの場所にいない朝市〉。この歌を詠んだ故山下すてさんは輪島の人だった。1980~90年代の朝日歌壇のスター的な投稿者で、読者にファンも多かった▼〈半襟(はんえり)に小花刺しつつ耳澄ます海原を来る正月の音〉の歌もあった。季節を告げる自然は、時に牙をむく(きばをむく)。災害はいつ起きてもおかしくないのはわかっている。それでも「正月になぜ」と思わずにはいられない。
炎上する機体=2日午後6時36分、羽田空港、嶋田達也撮影
2日午後5時50分ごろ、東京都大田区の羽田空港C滑走路で、着陸しようとした日本航空(JAL)の516便と、滑走路上にいた海上保安庁の航空機が衝突し、双方が炎上した。警視庁や東京消防庁(しょうぼうちょう)によると、海保機の5人が死亡、1人(機長、きちょう)が重傷を負い、JAL機の乗客・乗員のうち14人が負傷した。
国土交通省と海上保安庁は、2日午後9時過ぎに会見を行い、今回の事故について航空事故と認定し、運輸安全委員会に通知したことを明らかにした。
くわしい事故原因については調査中ということだが、政府関係者によると、着陸中の日本航空の旅客機に対して海上保安庁の航空機が滑走路に進入したとの見立てもあるという。
一方、日本航空も会見を開き、「着陸許可は管制から出ていたと認識している」と着陸の許可があったことを明らかにした。