2024年1月5日 5時00分

被災地と情報

 能登半島地震の発生から3日が過ぎても救援物資が届かず、耐えている被災者がいる。強い余震に加えて、厳しい寒さが続く。避難所では「TKB+W」が合言葉(ごうことば)と言われる。だが、トイレ、キッチン(食事)、ベッドとウォーム(暖房(だんぼう))はいまだに実現できていない▼不足しているのは、物資だけではない。情報も同様だ。総務省によると、石川県輪島市(わじまし)の一部地域で民放4社とNHKの放送が停止している。中継局への燃料補給が行えず、非常用バッテリーも枯渇(こかつ)しているためだという▼大きな災害が起きると、入ってくる情報が急に減ってしまう。通信状況が安定せず、ネット環境が悪化する。携帯電話もつながりにくくなり、家族や友人らとのやりとりが途切れる(とぎれる)。外の世界が見えないと、取り残されたような気持ちになる▼関谷直也(せきたに なおや)著『風評被害』によると、「うわさが広まるのは、ひとえに情報不足によって不安が解消されないことが原因」だという。今回も、直後から「倒壊した家屋に家族が閉じ込められた」などの偽情報がネット上に拡散された▼過去の災害での流言やデマには、差別・偏見や愉快犯的な動機があった。今回は利益を得る目的もあるようだ。X(旧ツイッター)が、表示回数を含む条件を満たすと収益が分配される仕組みになったためだ▼善意(ぜんい)をもてあそぶどころかカネ稼ぎに使うとは。怒りを覚えるより悲しくなる。止めるためにも、正確な情報を伝えて不安を和らげたい。メディアの使命でもある。