2024年1月9日 5時00分
輪島市(わじまし)での車中泊(しゃちゅうはく)
午前4時すぎ(よじすぎ)、寒さで目覚めた(めさめだ)。先週末、輪島市を取材で訪れて車中泊(しゃちゅうはく)をしていた。暗闇の中、外気は4度という表示がダッシュボードに浮かんでいる。車内は6度。エンジンをかけない鉄の箱は、あっという間に寒気にのまれた▼厚手(あつて)の靴下をはき、ダウンのフード(hood)をかぶり、それでも体の芯からふるえが来る。少しでも体温を奪われまいと腕組み(うでくみ)して目を閉じる。と、車が揺れた。余震だ。おまけに激しい雨が車体をバチバチとたたく▼狭い空間で一人、音に閉じ込められるうちに、昼の光景を思い出した。市中心部では、壊れた家の窓が古い布などで覆われていた。割れたガラスから雨や雪が吹き込まぬように、と被災者は祈るような気持ちだろう。ブルーシートは間に合っていない▼夜が明けると鳳至(ふげし)小学校の校庭では、車中泊をしていた人たちが体を動かし始めていた。浦見満(うらみ みつる) さん(59)は家族3人で、元日から車で過ごしていた。ガソリンを節約するために、暖房を入れるのは明け方の1回だけという▼避難所には行かないのですか、と尋ねると「高齢の母がいて、集団生活で風邪などをうつされるのが心配で」。不安の終わりは見えない。いつまであんな夜が続くのか。いつまで耐えねばならないのか▼「震」という字の中には、雨をともなった干支(えと)の「辰(しん)」が見える。正月の雨は雪まじりとなり、帰路(きろ)についた後、街は白く覆われた(おおわれた)。余震、寒さ、空模様(そらもよう)……。年初(ねんはつ)から無情な天(むじょうなてん)に苦しめられている被災者に、支援の手を。
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しゃちゅうはく 2【車中泊】自動車や列車の中で寝泊まりすること。車内泊。
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ブルーシートとは、ポリエチレンなどの合成樹脂製のシートのこと。ほとんどの汎用品は青色である[注釈 1]ことから、この呼び名が一般化した。ただし、これはいわゆる和製英語となり、英語ではポリエチレンターポリン(Polyethylene tarpaulin)または略称であるポリタープ(polytarp)と呼ばれる。