2024年1月23日 5時00分
英史上最大の冤罪事件
4夜連続(よんやれんぞく)の正月特番(しょうがつとくばん)ドラマが記録的な視聴率を稼いだ――(かせいだ)。日本的に言えばそんな状況か。英国の民放ITVの「ミスター・ベイツ対ポストオフィス」が年明け早々、政治を動かすほどの反響を呼んでいる。英史上最大と呼ばれる冤罪(えんざい)事件を描いたドラマだ▼英国でほとんどの郵便局は、郵便当局から業務委託された個人が運営する。事件の発端(ほったん)は25年前。富士通(ふじつう)の会計システムの導入後、システム上の残高が実際にある現金より多く表示される問題が頻発(ひんぱつ)した。窃盗(せっとう)や詐欺(さぎ)などの罪で700人以上の郵便局長が訴追(そつい)された▼ドラマの主人公はシステムの欠陥(けっかん)に気づいた元郵便局長だ。正義と補償(ほしょう)を求めて集団訴訟(そしょう)の先頭に立ち、勝利する。局長らは個別に「問題があるのはあなただけだ」と伝えられたため、みなが自分の落ち度だと思い込んでいた▼今回の放映後、郵便当局の元トップから大英帝国勲章(くんしょう)を剥奪(はくだつ)するよう求めて100万人以上が署名(しょめい)。補償(ほしょう)の遅れなどへの批判も高まり、スナク首相が有罪判決の破棄と補償の迅速化を急ぐと約束する事態になった▼事件については何年も前から地元メディアが報じてきた。調査報道の本も出たが、世間(せけん)の関心は薄かった。ヒットの理由を脚本家は「優れた俳優陣で、テーマも時期も良かった」と話している▼この数年、コロナ禍や物価高(ぶっかだか)で不安や不満が高まった。社会正義を訴えたドラマへの共感はよくわかる。デジタル化へ突き進むなかで自信を失い、孤立する怖さは他人事(たにんごと)ではない。
『Mr Bates vs The Post Office』は計4話からなる英国ITVで2024年1月に放送されたドラマである。脚本はグウィネズ・ヒューズ、監督はジェームズ・ストロング、主演はトビー・ジョーンズである。本作は、コンピューター・システムのホライズンの誤作動のために、窃盗・不正経理・詐欺の罪を着せられた何百人もの郵便局長に対する冤罪事件である英国郵便局スキャンダル(英語版)を描いたものである。本作は2024年1月1日から4日にわたって連続放送がおこなわれた。本作の原題は元郵便局長アラン・ベイツらが起こした裁判から名付けられている。
Mr Bates vs The Post Office is a four-part British television drama series for ITV, written by Gwyneth Hughes, directed by James Strong and starring an ensemble cast led by Toby Jones. The series is a dramatisation of the British Post Office scandal, a miscarriage of justice in which hundreds of subpostmasters were wrongly prosecuted privately and publicly for theft, false accounting or fraud due to a faulty computer system called Horizon. It was broadcast on four consecutive days from 1 January 2024