2024年1月31日 5時00分

岸田首相の施政方針演説

 丁寧に、真摯(しんし)に、適切に。岸田文雄首相は、発言に修飾語(しゅうしょくご)が多い。きのうの施政方針演説では「しっかり」が気になった。いわく、被災者の生活をしっかり支え、重要政策をしっかり進め、外交のかじ取りをしっかり果たし、賃上げをしっかりおこない、中小企業をしっかり後押しする▼首相としては、決意のほどを伝えたつもりであろう。だが聞く側にとって不安なのは、これらもまた、かけ声倒れに終わるのでは、という点である▼数えてみると、首相は就任以来、2500回以上「しっかり」と国会で繰り返している。立憲民主党の後藤祐一衆院議員が以前、国会で首相にただした。「与野党問わず、政治家なら(略)しっかりという言葉を使うときは、具体策はないけれどもやっているふりをしているという意味ですよね」▼なるほど。それが本当だとすれば、どうりで、首相が唱えた「新しい資本主義」の形はいまだ見えず、旧統一教会の友好団体トップとの面会についても、あいまいな説明に終わるはずである▼さて通常国会の最大の焦点は、やはり「政治とカネ」であろう。政治家の責任を広く問う連座制を導入する覚悟はあるのか。政策活動費の使い道を公開するつもりはあるのか。おとといの国会で首相は、身内の自民議員から連座制について問われ、こう答えた。「しっかり議論を行っていきたい」▼がくりとひざが折れそうになる。首相に求められているのは本気だ、事実だ、具体策だ。むなしい修飾語ではない。