2024年7月9日 5時00分
選挙の面白さとは
英国、フランス、東京。この1週間は選挙報道を追い続け、都知事選では1票を投じた。他国の選挙を見聞する(けんぶんする)のと、地元で候補者を選ぶのとでは目線が異なる。だが、いずれも真剣に向き合うと面白さまで見えてくる。なにしろ、選挙を「民主主義の祭り」と呼ぶ国もあるほどだ▼選挙の「面白さ」とは何か。まず思い浮かぶのは、政権交代への関心だ。これまで続いたものが変わるかもしれない、という緊張感がある。接戦になった場合も目が離せない。1票に感じる重さはいや増す▼英国では保守党から労働党へ、14年ぶりの政権交代があった。予想通りの大勝(たいしょう)だったが、専門家は「労働党が勝ったというより、保守党が大敗(たいはい)した」とみる。不祥事や混乱が続いた政権に国民が駄目出し(だめだし)をした。新政権を見る目も厳しい▼仏下院(ふつかいん)の決選投票は驚きだった。極右(きょくう)の流れをくむ政党が最大勢力にならず、政局の行方も見えなくなった。「共通敵」を阻止(そし)しようと、左派と与党の両連合が事実上の選挙協力をしたためだという。戦略は功を奏し(そうし)、投票率も上がった▼英仏に共通するのは現政権への国民の強い不満と、その受け皿となる野党の存在である。党首らは時に激しく議論を交わして戦った(たたかった)。一方で都知事選では、これまで通りに現職が勝ち、しかも大差(たいさ)だった▼選挙は常に面白いとは限らないし、その必要もない。ただ、東京で候補者は言葉を尽くし語り合ったのか。有権者は十分な判断材料を手に選べたのか。そうは思えない。