2024年7月29日 5時00分
おおがわらまちで辞める
やったことはお粗末すぎる。だが職を辞さねばならないほどのことだろうか。宮城県大河原町(おおがわらまち)の議員が議会中にスマホゲーム「ツムツム」をしていた件である▼見学した小学生たちに、感想文で書かれたのがことの始まりだ。やや言い訳がましかったが、本人(ほんにん)は謝罪をした。それでも議会事務局には、辞職などを求める電話やメールが約170件あった。多くは町外からという。「町及び議会の名誉や品位を損なわせた」と議会は辞職勧告を決議。反対したのは13人中1人だった▼思い出すのは、国会での「ワニ動画」である。2020年、衆院内閣委員会での審議のさなか、自民党議員が巨大ワニの動画に見入った。残念ながら、国会でも地方議会でも、あきれたふるまいはさほど珍しくない▼だからいまさら、と言いたいのではない。童話の世界でも、子どもが指をささねば、王様は裸で平然としていただろう。「それはおかしい」と声が聞こえたら、本人も、こんなものだと看過(かんか)していた人も、己を恥じて改める。でも繰り返されるなら身の振り方を問う、というのが順序ではないか▼聞けば、小学生たちは、ほかに居眠り議員などの存在も指摘していたという。扱いの差は、子ども心にも不思議に映る(うつる)に違いない▼議員は辞職した。「家族や知人の生命を脅かすこと」があったと語ったそうだ。もし本当であれば、そちらの方がよほどたちが悪い。手強い(てごわい)不正義はそのままに、叩き(たたき)やすい相手を皆で叩く。そんな空気を懸念する。