2024年3月6日 5時00分
子どもを守るために
英国で子どもの保護に関する法律や制度を議論するとき、必ずといっていいほど参照される事件がある。1973年、里親のおばから実母の元に戻った7歳の少女が亡くなった。食べ物を与えられず継父に殴られて骨折するなど、残酷さに人々は衝撃を受けた▼英政府は調査委員会を設置し、法律家らによる報告書と勧告が出された。おばと暮らしたい少女の希望が通らなかったことや関係機関の連携不足などが明らかになった。これを転機に、子どもの意向が最優先される政策へ変わっていった▼英国では、痛ましい虐待や性犯罪から政策が見直されることが多い。2002年には、10歳の少女2人が隣の学校の用務員に殺害された。この事件をきっかけに、子どもに関わる仕事に就く人の犯罪歴を確認する仕組みが整った。現在の「DBS」の前身である▼これを参考にした「日本版DBS」を創設しようと、検討が進められている。性犯罪歴を確認するよう事業者に求める制度だ。こども家庭庁は先月末に自民党の部会で骨子案を示しており、今国会での法案提出を目指すという▼文科省によると、22年度に児童生徒へのわいせつ行為で処分された公立学校の教職員は119人に上る。憲法が保障する「職業選択の自由」は考慮すべきだが加害者を子どもから遠ざける仕組みは必要だ▼子どもを性犯罪や虐待から守るために何ができるか。英国は徹底した調査と議論で対策を導き出し、見直しを重ねてきた。その姿勢も参考になる。