2024年3月19日 5時00分

プーチン大統領の勝利宣言

 ひとりで近くのスーパーに買い物に行き、自宅アパートメントに戻ってきたところだった。満杯(まんぱい)の買い物袋を抱え、エレベーターに乗ったアンナ・ポリトコフスカヤさんは銃で撃たれ、亡くなった。2006年のこと、モスクワで起きた事件である▼彼女は、新聞記者だった。48歳で、息子と娘を持つ母親だった。プーチン政権の暗部を暴く記事を、何本(なんほん)も書いていた。幾度(いくど)も脅迫を受け、毒殺されかかったこともあった。それでも怯む(ひるむ)ことなく、「私は書かなければいけない」と言っていた▼ロシアの治安当局がチェチェンで、どんな非道な殺戮(さつりく)をしたか。反テロ戦争はいかにその隠れ蓑(みの)にされたか。彼女が明らかにしなければ、虐げられた(しいたげられた)人々の証言は永遠に闇に埋もれて(うもれて)いたかもしれない▼「知っておかなければいけない。真実を知ればみんな、居直りとは無縁になれる」。自著『チェチェンやめられない戦争』にそんな言葉がある。政権からすれば、まさに消えてほしい記者だったに違いない▼彼女の死から18年。銃撃犯らは逮捕されたが、黒幕の存在はナゾのままだ。記者への弾圧はさらに強まっており、政権に都合の悪い人物の不審死も絶えない。ウクライナ侵攻では、ロシア軍の残虐行為が繰り返されている▼きのう、プーチン大統領の5回目の当選が伝えられた。ポリトコフスカヤさんが身命を賭して(として)、訴えた(うったえた)言葉を反芻(はんすう)する。「勇敢でありなさい。そしてすべての物事を然るべき(しかるべき)名前で呼ぶのです。独裁者は独裁者と」


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アンナ・ステパーノヴナ・ポリトコフスカヤ(ロシア語: А́нна Степа́новна Политко́вская、ラテン文字表記の例:Anna Stepanovna Politkovskaya、1958年8月30日 - 2006年10月7日)はロシア人女性のジャーナリスト。ノーヴァヤ・ガゼータ紙評論員。第二次チェチェン紛争やウラジーミル・プーチンに反対し、批判していたことで知られている[1]。

ポリトコフスカヤはチェチェン共和国での取材を行っていた。彼女は『Putin's Russia』と同様にチェチェンに関する書籍を何冊か著述し、国際的に名声ある賞を数多く受賞した。

2006年、自宅アパートのエレベーター内で射殺され遺体となっているのが発見された。