2024年3月28日 5時00分
カビと人間
みそやしょうゆの香りとうまみを生み出す麹(こうじ)は、米や麦などを蒸してコウジカビを混ぜたものだ。和食の基本である発酵食品の味を決める存在で、日本の「国菌」と呼ばれている。室町時代にはすでに麹売りがおり、朝廷や幕府が流通を管理する制度もあったという▼「かもすぞー」のせりふで笑わせたのは、漫画『もやしもん』に登場するかわいい麹菌たちだった。主人公の沢木(さわき)は地方の種麹屋(たねこうじや)の息子で、菌が肉眼で見える特異体質。東京の農業大学に進学し、研究室にあったみそをのぞき込んだ際に実家にいた菌をみつける▼沢木との再会を喜んだ黄麹菌(木こうじきん)の名前はA・オリゼー。黒麹菌のA・アワモリや、うまみについて語らせると長いA・ソーエもいた。同じ菌でも、いろいろな種類があると知った▼いま問題になっているのは、これらとは異なる紅麹だ。発酵で赤くなるため着色料などに使われてきたが、近年は健康食品にも用いられる。小林製薬のサプリメントをめぐって2人が亡くなり、多数が入院したことが明らかになった▼同社は機能性表示食品として、悪玉コレステロールの値を下げると効果をうたっていた。原因はまだ不明で、紅麹原料の一部に「未知の成分」が含まれていたと説明している。何らかの理由で、特定が難しい物質が生まれたのだろうか▼人間との付き合いが長いカビでもわからないことがある。より長く健康に生きるための研究は進むが、安全に享受(きょうじゅ)するにはどう向き合えばいいか。じっと考える。
小林製薬「紅麹」 厚生労働省が2人目の死亡発表 入院は106人に 2024年3月27日 2時17分
「小林製薬(こばやしせいやく)」の「紅麹(べにこうじ)」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓(じんぞう)の病気などを発症した問題で、厚生労働省は、26日に行った会社への聞き取り調査の結果、これまで公表されていた1人に加えて、2人目の死亡事例が報告されたと発表しました。
厚生労働省は、食品衛生法に基づいて廃棄命令などの措置を取るよう会社の本社がある大阪市に通知しました。
小林製薬は対象となる製品の使用を中止するよう呼びかけるとともに、成分の分析を進めています。
全国では紅麹原料を使った商品を自主回収する動きが相次いでいて、記事ではNHKが調べた自主回収を行っている商品の一覧を掲載しています。