2024年2月3日 5時00分
「裏金」の訂正報告
新聞紙面を上から下まで貫く(つらぬく)一覧表を久しぶりに見た。自民党安倍派が訂正した政治資金収支報告書の内訳である。苦労を喧伝(けんでん)するのは好まないが、ぜひ知っていただきたい。あの表は同僚たちの努力の固まりである。締め切りに追われながら、報告書をめくって必死に集計した▼何しろ安倍派が発表したのは、紙ぺら1枚に過ぎなかった。過去5年で約6億7千万円の記載漏れ(きさいもれ)があったとあるだけで、どの議員に、いつ、いくらパーティー収入を還流させたのか、ひと言の説明もない。「心よりお詫び(おわび)申し上げます」と記された言葉がむなしい▼一覧表に並んだ名前をながめれば、研究者が使う国の科学研究費について「ずさんな経理」だと批判したり、道徳心を説いてきたりした顔が並んでいる。なのに、金の使い道などについてまともな説明はなく、派閥幹部(はばつかんぶ)は会見を拒む(こばむ)▼実態解明のために、自民党はきのうから議員の聞きとりを始めた。だがその一方で、野党が国会で「裏金」と口にすると、抗議を繰り返しているそうだ。土台無理(どだいむり)があろう。2018、19年の資金の流れは非公表のままだ。つまり、紛うこと無き(まごうことなき、unmistakable)裏金ではないか▼報告書には宣誓文を添える(そえる)決まりになっている。「この報告書は(略)真実に相違ありません」。訂正された書類では、この一文にうえからバツ印がつけられていた▼うやむやのままに幕を引こうとすれば、党にも決定的なバツ印がつけられるかもしれない。筆を握っているのは国民である。