2024年2月6日 5時00分
東京に雪が降る
雪にも、においがあるのだと初めて知りました――。ずいぶんと昔のこと、そんな一文が記された年賀状をもらったことがある。就職で埼玉から秋田に引っ越した若者からだった。慣れない雪国(ゆきこく)の暮らしに戸惑いつつ、自らの発見を楽しむ感性が静かに伝わってきた▼以来、雪を見るたび、私も気になるようになった。空気がきゅっと震えて引き締まるなか、鼻の奥で探す。ああ、これが雪のにおいなのか。意識するまで、存在さえ気づいていなかったのだから、人間とは何とも不思議なものだ▼においだけでなく、音もある。ギュッギュッときしむ屋根に重く、ふり積もる。まるですべてを押しつぶそうとするようで、「あんなに恐ろしい音はない」と日本海側の町に生まれた友人は言っていた▼きのう東京に雪が降った。冷たく、じめっとした霙雪(みぞれゆき)だった。交通機関や流通が止まり、困った人も多かったに違いない。きょうもまた、凍った雪(こおったゆき)に足を取られることなきよう、お気をつけて▼昔に比べると、都会での降雪(こうせつ)は減ったらしい。ただ、生活を直撃する不便さ、危うさはむしろ増したようだ。不要不急の外出を控えるよう繰り返し迫られ、せわしく、慌ただしく、あたふた( hurriedly)する。仕方がないと思いながらも、雪を感じる余裕なき自分が、さびしい▼〈おるがんをお弾きなさい 女のひとよ〉。萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)は「黒い風琴(くろいふうきん)」でうたった。風琴とは、オルガンである。〈かるく やさしく しめやかに 雪のふつてゐる音のやうに〉
しめやかに 副詞,【悲しみの中に】sorrowfully ; 【厳粛に】solemnly ; 【静かに】quietly.
▸ 彼の葬儀はしめやかに執り行われた. His funeral was solemn [was conducted solemnly].
雪とは、大気中の気体だった水(つまり雲)が凍って、結合と成長を繰り返して雪の結晶となったものが重力を受けて地表に降り注ぐものですが、これが地上に落ちてくるまでに溶けたものが雨となります。
(なので雨は全て、もともと雪だったということになります)
そして、霙(みぞれ)とは溶けかかって降る雪、あるいは大気上層の雪が中、下層(かそう)の水分で湿って液体の水とまざった降水を指します。