2024年5月21日 5時00分
上川外相(かみがわがいしょう)、語ってみては?
ハノイの高級ホテルで、その発言を聞いたのは、2001年7月のことだ。日中外相会談を終えたばかりの唐家シュワン(タンチアシュワン)外相が、私の目の前にいた。「(日本の外相に)やめなさいとゲンメイしました」。高い声の日本語がロビーに響いた。靖国参拝についての言葉だった▼締め切り時間が迫るなか、逡巡(しゅんじゅん【ためらい】)して原稿を書いた記憶がある。文脈からして、ゲンメイは「言明」と考えるのが自然だろう。だが、より厳しい表現である「厳命」の可能性もゼロではない▼中国側の幹部に尋ねると「好きに書けばいい」。「言明」と報じたが、臆測も広がった。唐氏が厳命説を否定したのは9日後。発言のあいまいさを巧みに利用するのは政治の常である▼さて、こちらはどうか。「この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」。上川外相の選挙の応援演説だ。本人が発言を撤回し、真意は「女性パワーで未来を変える」ことだと釈明した。「うむ」は「産む」でなく、「生む」ということらしい▼それでも、なにやら、もやっとした気持ちは消えない。「生む」であっても、何が女性なのかを決めつけるような言葉の危うさを指摘する声もある。女ならば、男なら、といった表現に通じる違和感なのだろうか▼あなたの考えを、もっと聞きたい。首相候補の下馬評(げばひょう、噂)もあるだけに、よい機会だ。保守層にどう思われるか。女性票はどう動くのか。この際、そんな目先の思惑を離れ、堂々とジェンダーについて語ってみてはいかがか、上川さん。