2024年8月31日 5時00分

兵庫県知事のパワハラ疑惑

 SNSに「あそこは殿様商売だ」と書かれていたら、どんなビジネスを想像するか。本来は「のんびりと構えて、利益を上げる工夫などをしない商法」をさす。商売っ気のなさと言ってもいいだろう▼でも最近、別の使い方を目にする。「競争相手がいないからって平気で価格をつり上げる。あそこは殿様商売だ」。立場にものを言わせて高圧的にふるまうという意味だ。王様気どり、と近いイメージだろうか▼かの地の首長にも、そんな気持ちがどこかにありそうだ。「(俺は)知事やぞ」。パワハラ疑惑などをめぐる兵庫県職員のアンケートの中に、斎藤元彦知事が声を荒らげたとの記述がある。机の上の知事の名札が傾いていて怒られた、事業の説明をしたら舌打ちされた……。顔色をうかがう職員の様子が浮かぶ▼知事も人間だ。機嫌の悪い時はあろう。だが回答者の4割弱がパワハラを見聞きしているというのは、やはり普通ではない▼きのう県議会の百条委があった。パワハラについて問われた知事は、部下への口調をわびながらも「人望があるか好かれるかより、良い仕事ができる体制作りが大事」と淡々と語った。残念ながら、その体制がほころんでいるのが、いまの県政だろう▼他人事(ひとごと)のような知事の姿に、ある熟語が浮かんだ。本来は、失望してぼんやりしたさまをさす。ただ国の調査では、過半数の人が、腹を立てたさまという使い方をしているという。どちらの意味でも県民は「憮然(ぶぜん)」としているのではないか。