2024年8月8日 5時00分
いわさきちひろ没50年
子どもは遊びの天才だ。横断歩道は谷間のつり橋。白い線を踏みはずしたら真っ逆さま(まっさかさま)、とみんなでピョンと渡る。雨の日は、窓ガラスで運動会。どの滴が一番先にゴールするか、当てっこする▼遠い昔を思い出したのは、いわさきちひろの展覧会「あ・そ・ぼ」を東京・練馬で見たからだ。ぷっくらしたほっぺた。真っ黒な瞳。淡い水彩で描かれた子どもたちはどれも愛らしく(あいらしく)、そして少し悲しげでもある。とらえられた一瞬の表情は、幼いころの自分やわが子の記憶と重なって映る▼ちひろが55歳で亡くなって、きょうで半世紀。子どもの幸せと平和を願った人が、二つの原爆忌に挟まれてこの世を去ったことに不思議なものを感じる▼女学校を出たちひろは、女子開拓義勇隊の教師として旧満州へ渡った。帰国後に空襲で焼け出され、長野へ疎開した。「原爆の図」の丸木俊(まるき とし)に師事したのは戦後のことだ。「平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤り(いきどおり)を感じます」。そう語っている▼いくつになっても、子どもに帰れる。そんな人でもあったのだろう。インドの詩人タゴールの言葉を思い出す。「神は待っている、人間がかつてこどもだった頃を分別のなかに取り戻すことを」(川名澄(かわな すみ) 訳『迷い鳥』)▼病床でちひろは最後の筆をとって、描きかけだった赤ちゃんの瞳に色をさした。まっすぐにこちらを見つめている。ねえ、君は何を伝えようとしているの。
あてっこ 0【当てっこ】 (名)スル ① 物の名や数などを予想し合うこと。「いくつあるか―しよう」 ② 石などを投げて命中するかどうかを競うこと。また,その遊び。
昭和20年(1945)8月6日に広島、9日に長崎に原子爆弾が投下された。
いわさき ちひろ(本名:松本 知弘 まつもと ちひろ、旧姓:岩崎)、1918年12月15日 - 1974年8月8日、女性)は、子供の水彩画に代表される日本の画家、絵本作家。初期作品には、岩崎ちひろ、岩崎千尋、イワサキチヒロ名義で発表されたものが存在する。夫は日本共産党元衆議院議員で弁護士の松本善明(まつもと ぜんめい)。孫は絵本作家の松本春野(まつもと ハルの)。
福井県武生(たけふし、現在の越前市)生まれ。生涯「子どもの幸せと平和」をテーマとした。