2024年8月29日 5時00分
かくれてしまえばいいのです
〈ときどきぼくは/不安でたまらなくなる(略)いまいる場所を/うろうろと回ってみずにはいられない〉。この夏に亡くなった新川和江(しんかわ かずえ)さんの詩です。きみに以前見せてもらった教科書にも作品が載っていたので、名前くらいは聞いたことがあるでしょうか▼新学期が始まります。学校に居場所はない、誰も自分をわかってくれない。そんな不安や苦しさで今、いっぱいかもしれません。でも人一倍、気を使うタイプのきみは、周りを心配させないように頑張ってしまう。だから余計にしんどい。いや、間違っていたらごめんなさい▼先日、朝日小学生新聞が「かくれてしまえばいいのです」というサイトを紹介していました。生きているのがつらかったら「まずは1回、かくれてしまいましょう」。こっちへおいでよ、と優しく手招きされた気分です▼中には、しんどさをやりすごす「ゲーム自習室」や、体験談を読める「センパイ横町」などがあります。居心地のいい世界を案内するのは「むかんけいばあちゃん」。あなたとは無関係、だから何を話しても大丈夫と心をほぐしてくれます。親にも友だちにも言えないことを相談していい。そんなネット空間です▼この前会った時は、何もあげられませんでした。だから、まど・みちおさんの詩を最後に贈ります▼〈ぼくが ここに いるとき/ほかの どんなものも/ぼくに かさなって/ここに いることは できない〉。あなたはあなた。ただそこにいるだけで、すばらしい。