2024年6月5日 5時00分

自動車メーカーの不正検査

 JR大和(やまとじ)路線の路線図をじっと見る。奈良駅の一つ先――おお本当だ。郡山(こおりやま)、大和小泉(やまとこいずみ)、法隆寺(ほうりゅうじ)、王寺(おうじ)、三郷(さんごう)、河内堅上(かわちかたかみ)。お気づきだろうか。連なる駅の名で五七五七七になる。日常のなかに隠れたリズムの楽しさだろう▼さて、こちらは「隠れた」というより「隠されていた」か。同じリズムでありながら、ややうんざりさせる。オデッセイ、アルト、アテンザ、ロードスター、フィット、レクサス、カローラ、クラウン。車を生産するための性能試験で不正があった全38種の一部である▼うそのデータを使ったり、成績表を書きかえたりしたメーカーは計5社にのぼり、国交省がきのうトヨタに立ち入り検査をした。豊田章男(とよだ あきお)会長は、会見で「ブルータスお前もか」との感想を述べたそうだが、自社の不正に発する言葉ではなかろう。顧客のセリフを奪ってはいけない▼日本のものづくりといえば、独創性に欠けるところがあっても、丁寧さはゆるがせにしないというのが定説だった。日本車が世界で愛されるのも、そんな評判が一因だったはずだ▼なのに、どうしたことか。日本自動車工業会のメンバーは全14社。かつて燃費偽装(ねんぴぎそう)が発覚した三菱自動車に始まり、うち7割が、この10年ほどで不正に手を染めていたことになる▼〈自動車の検査より先「人検査」〉。昨年ダイハツでの問題が明らかになった際、朝日川柳が五七五で、まずは社内風土の総点検を、と求めていた。いまとなっては、業界全体への注文に見えて仕方ない。

 国土交通省は3日、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの自動車・二輪車メーカー5社で、量産に必要な「型式指定」の不正申請が確認されたと発表した。計38車種で安全・環境性能に関わる書類の改ざんなどがあり、国交省は、現在生産中の6車種について出荷停止を指示。4日から順次、5社に対して道路運送車両法に基づく立ち入り検査を行い、行政処分を検討する。

車五社不正データ.png