2024年11月23日 5時00分
虚構新聞20年
正しい(ただしい)英語表記を策定する英オックスブリッジ大学の委員会は、夏を意味するsummerを、地球温暖化にともなって、最上級のsummestに格上げするよう勧告した。太陽に由来するsumを暑さのために比較級の形へ強めて以来、およそ900年ぶり――▼パロディーニュースのサイト「虚構新聞(きょこうしんぶん)」に載ったこの夏の記事である。むろん、そんな大学も歴史も存在しない。あるわけないのにありそうなほら話で、同紙には何度もニヤリとさせられてきた。創刊から20年になるそうだ▼「社主」は匿名(とくめい)のUKさん。1千本以上の記事を一人で書いてきた。「虚構」を綱領とする新聞社にとって、記事が現実になるのは最大の痛恨事だ。おわびを書いたこともある。「日本の奥ゆかしさ」などを政府が海外向けに宣伝し始めた、と書いたところ、その後に経済産業省が似た冊子を出したからだ▼風刺の文化は、古くから続いてきた。なのに今は、フェイクニュースという言葉で虚実の境界線が溶かされ、パロディーにも冷ややかな視線が注がれている。なんとも残念だ▼トランプ氏の再選で、さぞやりにくいのでは。UKさんに尋ねると、そうでもないと意外な答えが返ってきた。「例えば『トランプ氏、全閣僚ポストを一人で兼任』のような荒唐無稽(こうとうむけい)な記事でも、ありそうだと思ってもらえます」▼次の米司法長官の指名交代劇があったばかりだ。波乱はまだあるかもしれない。UKさんが、またおわびをせずに済みますように。
虚構新聞(きょこうしんぶん、英語: Kyoko Shimbun)は、個人運営による日本のテキストサイト。「実際にありそうで実は存在しない」ネタをニュースとして掲載している。
2004年3月に、滋賀県在住の塾講師・UKによってすでに運営されていた個人サイト「楠木坂(くすのきざか)コーヒーハウス」上で、UK自身が「エイプリル・フール限定の嘘ニュース」を掲載した事に端(たん)を発している。「1本だけ書くつもりがまとめて3〜4本書いた」。その後もエイプリル・フールに留まることなく、月に1〜2本のペースで、新しい虚構(きょこう)記事を投稿、20本ほど溜まった所で「虚構新聞」として、サブページ化する事を思い立って作成された。2008年に独自ドメイン名での運用が開始されるまでは、先述のサイトのサブページとしての運用が続けられていた。