2024年11月1日 5時00分

おしいれのぼうけん

 「さくらほいくえんには、こわいものがふたつあります」。古田足日(ふるた たるひ)さんと田畑精一(たはた せいいち)さんの絵本『おしいれのぼうけん』はこう始まる。二つのうち、一つは押し入れで、もう一つはねずみばあさん▼お仕置きで押し入れに入れられたわんぱく二人組(ふたりくみ)は、暗がりに口を開けたトンネルを抜けて地下の世界へ。不気味な(ぶきみ)ねずみばあさんと対決する。二人は言う。「てだ、てをつなごう」▼お話は、東京都郊外のマンモス団地にある「そよかぜ保育園」で、古田さんらが聞いたエピソードをもとにつくられた。押し入れは、園が一時引っ越した1990年ごろまで残っていたそうだ。「あの本に出てくるのはこれだよ、と子どもたちに話していました」。かつて働いていた保育士さんが教えてくれた▼初版が発行されてから、きょうでちょうど50年。絵本を読んだ後、自宅の押し入れに潜り込んだのを親に見つかって「何をやっているの」と怒られたのを思い出す。真っ黒な表紙も、ねずみばあさんの絵も怖くてたまらないのに、また読みたくなる。きっと、いまの子も変わらないだろう▼子どもは緩やか(ゆるやか)に成長していく。と思うとある日突然、ぐんと変わっていて驚かせる。古田さんはそれを「子どもの成長には節がある」と表現した。ぼうけんを終えた二人組も、節を通過して生まれ変わった▼絵本の最後はこう終わる。「さくらほいくえんには、とてもたのしいものがふたつあります」。一つは押し入れで、もう一つはねずみばあさんだ。

おしおき 02【御仕置き】 ① いたずらや悪い事をした子供に,こらしめのために罰を加えること。また,その罰。 ② 江戸時代,刑罰をいう。 →しおき

桜保育園(さくらほいくえん)