2024年11月2日 5時00分

北朝鮮の新型ミサイル発射

 ハトを訓練してミサイルを誘導(ゆうどう)させる。今年のイグ・ノーベル平和賞は、そんな奇妙な実験をした米国の著名な心理学者、故バラス・スキナー博士に贈られた。対象となったのは1960年の論文だ▼敵の船などの映像を正しくつついたら、餌をやる。何度も繰り返して覚えさせたハトをミサイル内に閉じ込めて、近づく標的を画面に映す。つついた位置を検出して、そこへ向かうように軌道を制御(せいぎょ)する。仕組みは単純で、安く、電波妨害の影響も受けないとスキナー博士は太鼓判(たいこばん)を押している▼イグ・ノーベル賞に輝いた数々の研究には、くすっと笑わされてきたが、これには何とも言えない暗さが漂う。平和の象徴とされるハトがミサイルを操る。ブラックユーモアにしても皮肉がきつい▼さて、おとといのミサイルを操っていたのは、かの人物の体制維持への執着心(しゅうちゃくしん)か、米大統領選への当てつけの一念か。北朝鮮が最新型の弾道ミサイル「火星19」を発射した▼7千キロ超という高度も、86分という飛行時間も過去にないものだった。国連安保理決議への違反だが、立ち会った金正恩(キムジョンウン)総書記は、核戦力の強化路線は「絶対に変えない」と言い放ったそうだ。ロシアという後ろ盾を得て、好き放題に世界の危機をあおっている▼スキナー博士の研究のキーワードは学習だった。核開発の姿勢を改めることこそが、国際社会からの孤立や国民の困窮などを解消する唯一の道である。「最高指導者」になんとか学習させるすべはないものか。