2024年11月13日 5時00分

子どもが減り続ける

 2024年に生まれる日本人の子どもの数が70万人を割り込みそうだ。この報道に触れたとき、にわかには信じられなかった。80万人を割ってから、まだ2年しかたっていない。「初の100万人割れ」で驚いた8年前から、出生数は加速度的に減っている▼厚生労働省が今月に発表した人口動態統計の概数によると、今年1~6月の日本人の出生数は32万9998人だった。前年同期比で6・3%減だ。「下半期も同じペースなら」が前提ではあるが、70万人を割る可能性は高い▼少子化対策は結果が出るまでに時間がかかる。それでも、政府はもう30年も政策を打ち続けているのに成果が上がらない。なぜなのかと考えつつ、中山徹(なかやま とおる)著『地域から考える少子化対策』を読み、問題の根深さ(ねぶかさ)に改めて気づいた▼同書によると、現在の「異次元」を含む政府の対策の主眼は、働く女性を増やすことにあったという。就業率は上がり、「それなりに成功」した一方で、労働環境は改善されなかった。非正規雇用や低賃金、働き方の意識、東京一極集中といった問題だ▼例えば人手不足(ひとでふそく)の職場だと、気兼ねせずに産休や育休が取れない。意識が古いままの上司には、時短勤務や残業免除を申請しにくい。社会のすみずみまで変える覚悟がなければ、効果的な政策にはならない▼ショックを受けたが、「70万人割れ」は日本が至った現実でもある。寛容で、だれもが将来に展望(てんぼう)を持てる社会。そんな環境で子どもは生まれ、育って欲しいと思う。