2024年11月30日 5時00分

握手する政治家たち

 政治家にとって、握手は大事な商売道具である。信じがたいほどの数をこなす人も過去にはいたようで、20世紀初頭の米大統領セオドア・ルーズベルトは1日で8513人と握手したとされる。国家元首としては、世界記録らしい▼ドイツ首相だったメルケル氏は最近出した回顧録で、1期目のトランプ米大統領から握手を拒まれたことを振り返っている。2017年の会談での話だ。報道陣は2人に握手を求めたが、大統領は「無視した」▼安倍首相とは「19秒も握手したのに」と彼女は不快感を隠さない。トランプ氏がどんな人かも忘れて、握手しようと小声で言ってしまったと悔やむ(くやむ)。「彼が話のネタをつくろうとしたのに対し、私は普通の人への振る舞いをしてしまった」▼握手をめぐっては、こんな話を外交官から聞いたこともある。某国外相は他国要人の手を握った後、ぐっと手前に引く癖があるという。不意を突かれた相手は前傾(ぜんけい)姿勢になる。そこをカメラマンに撮影させるのだとか▼相手が頭を下げているような写真で、自分の存在を大きめに印象づける。そんな狡猾(こうかつ)な狙いらしい。外交とは、国益をかけた密室の交渉であるとともに、為政者(いせいしゃ)が国民に見せたい何かを見せようとする舞台でもあるのだろう▼石破首相は中国国家主席と握手する際、先方(せんぽう)が片手なのに、両手を出していた。カナダ首相とは、自分だけ座ったままで握手し、失礼だと指摘されていた。たかが握手、されど握手か。商売道具の扱いは、丁寧に。

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石破とカナダのトルドー首相.png