2024年12月18日 5時00分

四字熟語を創る

 太宰治(だざい おさむ)は、自作の四字熟語(よじじゅくご)を作中によく盛り込んだ。例えば『斜陽(しゃよう)』にある「含羞旋風(がんしゅうせんぷう)」。一目見て、恥ずかしさが旋風のように飛び込んでくる。未完の『火の鳥』には「七転八苦」という不思議な表現もある。「七転八倒」でも「四苦八苦」でもないのがおかしい▼言葉は生きている。だから、常に変化する。「一所懸命」が「一生懸命」に変容したように、多くの人が使えば、新たな熟語が生まれる。それが言語の宿命であり、面白さでもあるのだろう▼さて、これらの言葉はどうか。新語に定着するものはないだろうか。住友生命が募集(ぼしゅう)する毎年恒例の「創作四字熟語」である。きのう発表された入選作で、この1年を考える▼地震と豪雨が能登(のと)をおそった。「辛労辛苦」ならぬ「震労浸苦(しんろうしんく)」。苦しく、かなしい四文字である。政治は混迷し、多くの選挙もあった。米大統領選は「虎針眈眈(こしんたんたん)」の争いだった。トラがトランプ氏なのはいいとして、ハリス氏を針とする発想は何とも柔らかい▼「当代随一」でなく「盗打随一(とうだずいいち)」は、もちろん大谷選手の快挙である。お米がスーパーの棚から消え、てんてこ舞いとなって「店店枯米(てんてんこまい)」。応募の締め切りは10月だったので、年末の国会論戦を聞き、かつての作品を思い出す。「税途多難(ぜいとたなん)」は、いまでも通じる秀作だろう▼混乱の韓国政治には、筆者の駄作(ださく)を書かせてもらおう。大統領が批判に対し、「虚心坦懐(きょしんたんかい)」どころか戒厳令を出すとは驚いた。権力のおごりはなかったか。「驕心弾劾(きょうしんだんがい)」