2024年12月12日 5時00分
今年の漢字は?
幻(まぼろし)と幼(おさな)、綱(つな)と網(もう)、萩(はぎ)と荻(おぎ)。漢字を書くときに一瞬迷うことがある。なかでも巳、已、己のトリオ(trio)は、取り違えやすさの筆頭格だ。縦棒をどこから始めるかだけで、音も意味も変わってしまう▼昔の人たちも苦労したのだろう。覚え方をこんな歌にしている。「ミは上に、スデニ・ヤム・ノミ中ほどに、オノレ・ツチノト下につくなり」▼辰(たつ)年から巳(み)年へ。今年も残り20日となり、年賀状などの準備をしながら、この1年をふり返る時期になってきた。京都・清水寺では、日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」が、きょう発表される。墨痕(ぼっこん)鮮やかにしたためられる一文字は、さて何だろう▼闇、裏、米などと過ぎ去った出来事を思い浮かべつつ、わがトーナメントを勝ち抜いたのは「選」である。まさか、ああした結果になるとは。SNSというネット空間の中で、支持者たちが互いの声を高めあう。米大統領選でトランプ氏は完勝を果たし、日本の衆院選では自公が過半数割れに。韓国やインドの総選挙でも、与党が苦杯をなめた▼選挙制度をないがしろにするふるまいも目にあまった。はなから当選するつもりのない候補者が出て、他陣営にエールを送る。選挙演説という名のもとに威圧的な言動をまきちらす。こんなことが繰り返されては、民主主義は壊れてしまう▼じっと見つめれば、「選」の中には「己」が2人。何かを選ぶときに大切なのは、複合的な視点でものを見て、よく考えること。漢字もきっとそう教えている。