2024年12月13日 5時00分
45年前のクーデター
歴史は繰り返さないが韻(いん)をふむ、と言われる。45年前のきのう。韓国の全斗煥(チョンドゥファン)少将がクーデターを起こした。空挺部隊(くうていぶたい)などを出動させ、要人を拘束し、わずか一夜にして実権を握る。史実をもとにした映画「ソウルの春」は昨年、韓国で大ヒットした▼計画を成功させた将軍の不敵な笑いで、映画はフィナーレへと向かう。が、現実はそこで終わらない。7年にわたって大統領をつとめた後の裁判で、全氏はクーデターを首謀したなどとして無期懲役に。盧泰愚(ノテウ)・元大統領と共に法廷に立たされていた姿は忘れがたい▼栄光と凋落(ちょうらく)。光と影のコントラスト。韓国の大統領という存在は歴代、それを強く印象づけてきた。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領もまた、同じ道をたどるのだろうか。非常戒厳は覆され、きのう再び弾劾(だんがい)訴追案が国会に出された。捜査の手も間近にせまっている▼「弾劾であれ、捜査であれ、堂々と立ち向かう」。きのうの談話を一言でいえば、おれは悪くない、ということだろう。国民に頭を下げた6日前のおわびは、いったい何だったのか▼2017年に弾劾訴追された朴槿恵(パククネ)・元大統領の捜査を、検察幹部として率いたのが、他ならぬ尹氏であった。追う者が巡りめぐって(めぐりめぐって)追われる者に。まさしく歴史は韻を踏む▼交代(キョデ)、期待(キデ)、時代(シデ)。韓国の言葉では、そう発音するという。国会前で戒厳軍と向き合い、いまも抗議の声を上げている人々の姿を見ると、歯切れのよい韻律(いんりつ)が聞こえてきそうな気がする。