2024年12月26日 5時00分

スマトラ沖大地震から20年

 20年前のきょう、インドネシア・スマトラ島沖でM9・1の大地震が発生した。大津波(おおつなみ)はインド洋でタイやスリランカなどを襲い、アフリカ大陸にまで達した。死者・行方不明者は22万人以上とされ、日本人も約40人が犠牲になった。最大の被災地はスマトラ島北端のアチェ州で、16万人以上が亡くなった▼私はその6年後にインドネシアへ赴任し、同じ地震国(じしんこく)から来たとの思いでアチェに通った。父親を亡くした青年の話には衝撃を受けた。「父は政治犯で服役中だった。津波が来た時、刑務所の監房(かんぼう)はカギがかかっていて逃げられなかった」▼アチェでは地震前、30年近くもインドネシア国軍と独立派ゲリラによる紛争が続いていた。犠牲者は民間人を含めて、1万5千人を超える。政府は多数の独立派を投獄し、外国人の出入りを制限した▼被災後は世界中から支援金やボランティアが集まった。紛争を続けていては受け入れができないとの危機感が双方で高まり、一気に和平合意にこぎ着けた。政治犯が釈放され、ゲリラは武装解除し、国軍も撤退した。すべてが1年の間に進んだことに驚く▼長い紛争に和平をもたらしたのは、未曽有(みぞう)の災害だった。津波で妻と5人の子どもを失った地元村長(そんちょう)の言葉が忘れられない。「津波が私から奪ったものを思うと、その犠牲の上にある平和のありがたさが増します(まします)」▼アチェでは津波後世代も増えている。悲しい記憶を伝えていくのは覚悟がいる。それでも、災害と平和は語り継がれる。