2024年10月3日 5時00分
討論会とファクトチェック
正確。誤り。根拠が不十分。背景説明が必要――。約1カ月後に迫った米大統領選で欠かせないのが、第三者がデータを検証するファクトチェックだ。ハリス氏とトランプ氏が大接戦を繰り広げるなか、ネット上には真偽不明(しんぎふめい)の情報が飛び交って(とびかって)いる▼日本時間のきのう行われた副大統領候補のテレビ討論会でも、ファクトチェックが非常に役立った(やくだった)。対決したのは、民主党のウォルズ氏と共和党のバンス氏。どちらも個性が強く、弁舌(べんぜつ)に長けている(たけている)▼私が見た米紙ニューヨーク・タイムズのオンライン中継は、10人以上の記者が同時進行でファクトチェックを流し続けた。候補者が発言した直後に「判定」が付き、理由も示される。特に目についたのが「誇張(こちょう)されている」の判定だ▼ウォルズ氏が「トランプ氏は過去15年間、連邦税を一切(いっさい)払っていない」と述べると、すぐに「誇張」が付いた。「2016年に750ドルの連邦所得税を払っている」などの説明も。バンス氏の「住宅を買えなくなったのは何百万人もの不法移民のせいだ」という主張も誇張とされた▼普段はあまり目立たない(めだたない)副大統領候補の最大の任務は、相棒(あいぼう)である大統領候補を支えることだという。そのために事実を誇張しがちだが、丁々発止の議論(ちょうちょうはっし)を追う側は情報を精査する余裕がない▼討論会中、流れ続けるファクトチェックを眺めて考えた。便利だが、頼りすぎると自分で真偽を判断できなくならないか。政治から嘘(うそ)や誇張が消え、不要になる日は来ないのか。