2024年10月12日 5時00分
日本被団協にノーベル平和賞
「彼らのような日本人の候補者に平和賞が与えられれば、世界に原爆の持つ恐ろしい力を思い出させる可能性はあったことであろう」。ノルウェー・ノーベル委員会で25年間も事務局長を務めたゲイル・ルンデスタッドは、1995年の選考過程を回顧録で振り返っている▼「彼ら」とは、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)だった。この年は結局、核兵器の廃絶をめざす科学者でつくるパグウォッシュ会議とその創設者の一人に贈られた。発表を取材した記者たちは、予想外の授賞に驚いたという▼それから29年がたち、今年のノーベル平和賞が日本被団協に決まった。驚きで言えば、私もテレビ中継を見てびっくりした。ウクライナやガザに関する授与(じゅよ)を予想していたからだ。だが、「現在進行中の戦争で核兵器を使用するとの脅迫がされている」とする授賞理由に、納得した▼核兵器に反対する団体としては85年、世界の医師でつくる核戦争防止国際医師会議も受賞した。冷戦下の当時、6年半ぶりの米ソ首脳会談が控えていた。進む核武装に警鐘を鳴らす意図があったとされる▼今回も、緊張に満ちたいまの世界へ向けたメッセージだと思う。ロシアによるウクライナ侵攻から2年半以上たち、イスラエルのガザ攻撃はレバノンへ広がった。核兵器が使われる脅威は増している▼よりよい世界に関するビジョンと、それを実現しようとする精神を持つこと。受賞者たちの共通点として元事務局長は、そう書き残している。