2024年4月10日 5時00分

韓国人はがんばる

 韓国の人たちは「ファイティン」という言葉を、よく口にする。元々は英語のファイティングであり、「がんばれ」や「がんばろう」との意味である。腕をくっと曲げ、拳を握り、力を込めて言う。学校でも、職場でも、家庭でも、頻繁に使う▼なぜだろうか。東亜日報(とうあにっぽう)の東京支局長である李相勲(イサンフン)記者に尋ねてみると、「確かに、よく使ってますね」。唐突な問いに少し驚いた様子だったが、「でも、どうしてかは、考えたこともなかったです」▼韓国通の同僚によれば、2000年代の後半から、とみに目立つようになったとか。当初はスポーツの試合の応援で、日本で言う「ファイト」のように使われたが、徐々に用途が広がったようだ。たとえば、やる気のない部下を上司が叱るとき、「あなたはファイティンがないですね」▼背景には、苛烈(かれつ)な競争社会も関係しているのかもしれない。学歴を重視する風潮は、日本以上とも言われる。よい学校へ、よい企業へ。強い圧力のなかで、誰もが、がんばる、いや、がんばらなければならないか▼深刻な格差も伝えられる。既得権益にしがみつく古い政治に、若者たちはうんざりしているらしい。子どもを産みたいと、あまり思えない状況なのだろう。出生率は0・72と「超少子化」に突入している。日本にとっても、他人事ではない▼きょう韓国は、総選挙である。各陣営から「ファイティン」の声が響いてくる。隣国の有権者たちは、いかなる判断を示すのか。その選択を凝視(ぎょうし)する。

とみに 【にわかに】suddenly ; 【顕著に】remarkably. ▸ とみに人気が高まる increase rapidly in popularity. ▸ 彼女は近ごろとみに美しくなった She has suddenly become beautiful recently.