2024年4月17日 5時00分
報復と自制
暗い空を幾つもの飛翔(ひしょう)体が横切り、時折ぱっと閃光(せんこう)が走る。イランが現地時間の13日夜から14日未明にかけ、イスラエルへ向けた大規模な攻撃を行った。ニュース映像を見て、数の多さに驚いた。イランが発射した無人機やミサイルは、計350以上に及ぶ▼頭に浮かんだのは、イラクのクウェート侵攻に始まった湾岸戦争だ。フセイン政権下のイラクは1991年、イスラエルに計39発のミサイルを撃ち込んで挑発した。イスラエルに対して国家が仕掛けた直接攻撃である▼当時のイスラエル政権は挑発に乗らず参戦しなかった。クウェート解放を目指す多国籍軍は米国が主体で、その協調関係を重視したためだ。犠牲者が出ても報復を自制して評価された▼今回は33年ぶりの直接攻撃だ。イスラエルは報復に踏み切るのか。イランにとっては在シリアの大使館への空爆に対する攻撃だったので、報復への報復になるのか。中東の危機が一気に拡大しかねない状況が恐ろしい▼心配が高まるのは、ガザの惨状があるからだ。イスラエルの調査報道メディアは今月、昨年10月からのガザ攻撃でAI技術が使われたと報じた。何万人分もの標的リストを作成し、帰宅の瞬間を覚知するシステムだ。国軍兵が承認し、家族がいる建物ごと爆破していたという▼ガザの犠牲者に女性や子どもが多い理由が見えた気がしたが、イスラエル側は声明で否定している。イランに対しては現在、反撃方法などを協議中だという。自制はもう、無理なのか。