2024年4月28日 5時00分
なりすまして欺く(あざむく)
呼び鈴(りん)が鳴ってドアを開けると、2人組(ふたりぐみ)の中年男性が立っていた。刑事を名乗り、「警察手帳」をさっと見せると頭上の防犯カメラを指さした。「映像を見せてもらえますか」。近くで事件が起き、犯人(はんにん)が逃走中だという。今月下旬(げじゅん)、首都圏に住む80代の女性がこんな体験をした▼不審に感じた女性は丁寧に断り、地元の警察署へ連絡した。「この地域で捜査中の案件はないようだ。パトロールを強化します」と言われたという。大型連休中に空き巣(あきす)に入る家を物色し、防犯カメラの機能を確認したかったのだろうか▼他者になりすまして欺く手口(てぐち)は日々、更新されている。古今東西(ここんとうざい)の実例を集めたイアン・グレイアム著『詐欺と詐称の大百科(だいひゃっか)』によれば、動機は四つに要約できる。羨望(せんぼう)、エゴ、逃亡、スパイ行為だ▼こちらは富への羨望か、最新の手口を誇示したエゴか。著名人の画像を無断で使った「なりすまし広告」による投資詐欺が相次いでいる。フェイスブックなどのSNSに掲載し、本人が投資を勧めているかのように見せてお金をだまし取る▼警察庁によると、昨年の被害総額は約278億円。高齢者を狙う(ねらう)特殊詐欺(とくしゅさぎ)とは異なり、50代以下の被害が多い。SNS事業者の審査をすり抜けた広告に、現役世代がだまされてしまう▼審査の強化や違反広告の削除に努めているが、数の多さや技術の進化で追いつかない。これが主な事業者の言い分だが、最善を尽くしているのか。その影響力からみても、とても納得はできない。
なりすます 【成り済ます】 disguise oneself ⦅as⦆; pretend 〘to be〙. ▸ 男は探偵に成りすましていたが殺人犯だったのだ The man (had) pretended to be a detective, but he was the murderer himself.