テレビ健康診断 亀和田 武(亀和田 武(かめわだ たけし、1949年1月30日 - )は、日本の雑誌編集者、作家、コラムニスト、キャスターである。栃木県生まれ。成蹊大学文学部文化学科卒業。通称:カメチャン。) 2023/06/03
エンゼルス・ネトの容貌とフォームを見たとき、新風(しんぷう)が吹いた
どうしたんだろ、エンゼルス。MLB中継を観ている視聴者の何割(なんわり)かは、驚きと戸惑いを覚えている。
大谷翔平がホームランを放ち、三振の山を築いても、リリーフ陣が崩れて連敗(れんぱい)。これが毎年続いた。
なのに5月25日(日本時間)に対レッドソックス戦を3連勝で飾ると、貯金は5となった。この球団ってこんなに強かったの?
勝ち方も危なげない。前日は初回に先頭打者の若手(わかて)ミッキー・モニアックが本塁打を放ち、投手陣の継投(けいとう)も成功して無失点(ぶしってん)だ。
そして3連戦の最終日には、ルーキーの九番、ザック・ネトが二回に3点ホームランを放ち大差(だいさ)をつけた。そう、大谷くんとトラウトだけじゃないんだよ、いまのエンゼルス。
ネトがマイナーの2Aからいきなりメジャー昇格したのが4月15日だ。
メジャー初日のネトを目にして、何か初々しい(ういういしい)気配が漂ってきた。右投げ右打ち。バットを構えると、左脚を高く上げるフォームは珍しい。顔もシュッとしたハンサムでね。
デビューから2試合はノーヒットだが、守備が巧かった(美味かった)。遊撃手だけど、ヒット性の難かしい打球を捕える(捉える)と、6→4→3の送球でダブルプレーだ。
- 6→4→3の送球
おまけにデビューから一五試合で、なんと七死球(しちしきゅう)。MLB新記録だ。中継を観てたとき、解説の武田一浩(たけだ かずひろ)か今中慎二((いまなか しんじ、1971年3月6日 - ))が「なんで、よけないのかな。あれ、よければ当たりませんよ」と、投手出身者らしいボヤキを口にした。ネトにすれば「死球でもヒットと同じ。一塁に進める」の思いがある。
MLB中継の面白さのひとつは解説者の語りだ。特に武田さんはボソボソした口調で、アナウンサーの話にも「いや、それは違うんです」と持論を述べる。武田さんの喋りを嫌う(きらう)タイプも多いが、私のように彼の説得力ある分析の虜になっている視聴者もいる。
ともかくネトの容貌とフォームを見たとき、新風が吹いたと、私は感じた。村上春樹は29歳のとき、神宮球場(じんぐうきゅうじょう)のヤクルトvs広島戦で、ヤクルトのデイヴ・ヒルトンが先頭で二塁打を放ったときに小説を書こうと思いたったという。
彼は書いている。78年4月1日の神宮球場。芝(しば)の上で寝そべりながらビールを飲んでいると、最初の打席に彼が入った。「バッターボックスの中で、まるでしゃがみこむように不器用に身を折り曲げ、まっすぐに立てたバットのヘッドをぐるぐると回しながら」投手を睨みつけた新加入の先頭バッターは鋭いヒットを放ち、野手がボールに追いついたときには二塁に到達していた。このとき村上は小説を書こうと思った。
ネトとモニアックの活躍で、ヒルトン新加入の年にヤクルトが初のリーグ優勝を決めたような奇跡が起きると楽しいのだが。
ザカリー・アダム・ネト(Zachary Adam Neto, 2001年1月31日 - )は、アメリカ合衆国フロリダ州マイアミ出身のプロ野球選手(遊撃手)。右投右打(みぎなげみぎうち)。MLBのロサンゼルス・エンゼルス所属。
高校時代はMLBドラフトでは指名されず、キャンベル大学へ進学した。
大学では二刀流選手としてプレーした。初年度の2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響によってリーグ戦が縮小されたため、野手としては3試合の出場、投手としては1試合の登板のみだった。
- ジョン・デビッド・ヒルトン(John David Hilton, 1950年9月15日 - 2017年9月17日)は、アメリカ合衆国テキサス州ユバルデ郡ユバルデ(英語版)出身のプロ野球選手(内野手)。右投右打。