THIS WEEK「国際」 高口 康太 2023/08/23
48兆円負債で不動産会社“破産”2つの政策でミスをした習近平
中国経済に激震が走っている。不動産デベロッパー最大手のカントリー・ガーデン(碧桂園)は8月7日が期限の社債利払いを履行できず、10日には今年上半期は最大で約1兆1000億円の赤字になるとの業績予想を発表している。他にも不動産大手・遠洋集団が債務不履行に陥ったほか、21年秋から危機が続いていたエバーグランデ(恒大集団)も17日、約48兆円とされる負債を抱え米国で破産申請を行った。さらに、中国誌「財新」によれば、年内の債務不履行(ふりこう)が懸念される中国不動産企業は65社にのぼるという。
引き金となったのは20年夏の不動産規制だ。コロナ対策の金融緩和によって不動産価格が急騰したため、中国政府は強烈な引き締め政策を導入した。中でも、不動産デベロッパーは、債務規模を制限しなければ新たな融資を受けられないという条項が想像以上の波紋を広げた。金を限界まで借りて、土地を取得し、経営を拡大。アクセル全開だった不動産デベロッパーに急ブレーキを踏ませることとなったのだ。資金難から建設途中で工事がストップする物件が続出し、消費者には不安が広がった。不動産販売は21年7月以降、前年割れが続いている。社会主義国・中国で不動産が取引されるようになったのは20世紀末だが、以来、基本的には右肩上がりの市況が続いてきた。このトレンドが反転するきっかけとなる可能性もある。
中国の不動産会社では第2位だったエバーグランデ 影響は不動産業界だけにとどまらない。地方政府は土地の払い下げ収入に大きく依存してきた。土地財政と揶揄されるゆえんだ。庶民も安全安心な投資先として不動産に依存してきた。不動産を買いさえすれば、後はどんどん値上がりして資産が増えていくから老後も安心というわけだ。
不動産価格こそが中国の豊かさを支える柱だった。それを失えば何が起きるのか。日本のように、「失われた30年」に突入するとの不安までささやかれる。
しかし、総崩れとなるかは断定できない。いま、特に厳しいのは地方都市や郊外の物件だ。経営危機のカントリー・ガーデン、エバーグランデも、習近平政権による地方都市の開発促進の大号令に呼応した企業であり、住宅需要の高い大都市を中心に展開するデベロッパーは、立ち直れるとの見方もある。また中国政府は経済危機に対応する手段も余力も残されている。
問題は習近平政権が正しく対応できるか、だ。地方開発の号令、デベロッパーに大打撃を負わせた規制とすでに2つのミスを重ねている。噴出した危機への対応を誤り、三振とならないことを祈るばかりだ。