ツチヤの口車 第1323回 土屋 賢二 2023/12/29

友人へのメール

 お変わりありませんか。残念ながら小生(しょうせい)も変わりありません。

 貴兄(きけい)とは、年齢的には親子ほどの違いがあり、気品(きひん)では貴公子(きこうし)と山賊ほどの違いがありますが、このままでは、2人手を携えて(たずさえて)不幸の度を深めているような気がしてなりません。

 悪い流れを変えようにも時間が足りません。先日正月を迎えたばかりなのに、もう年の瀬です。時間が経つのはこんなに速いものでしょうか。寿命(じゅみょう)の短い蝉(セミ)などは生まれたとたんに即死する思いでしょう。

 ところで、いつも送っていただいているコーヒー、おいしく飲んでいます。最初は苦い味しかしなかったのですが、いまではそれを乗り越えることに成功しました。方法は、

(1)コーヒーを飲むときお菓子を食べて苦さをやわらげる(お茶席でお茶うけをいただいたり、手術のとき麻酔するのと同じです)。

お客様が来た時、友人や親戚が来た時など、お茶と一緒に出すお菓子。それが「お茶請け」です。

(2)「おいしい」とは苦い味のことだと再定義する。その結果、コーヒーと一緒に食べるお菓子がまずくなりました。

 何とかおいしく飲めるようになったのですが、先日問題に気づきました。コーヒー豆を食べているわけでもないのに、いつの間にか豆が一粒もなくなってしまうのです。

 貴兄に騙す(ダマす)度胸も知能もないことから、コーヒー自体の欠陥(けっかん)ではないかと思うに至りました。

 貴兄は先日、噴霧(ふんむ)して摂取すれば減り方は少なくなるとおっしゃいました。ただコーヒーが胃と肺のどちらに入るかという無視できない違いがあります。これはどの歯を抜くのか、だれの口座にお金が振り込まれるのかに等しい(ひとしい)違いです。

 保存の仕方によってはカビが生えたり、水分を吸って膨張するでしょうが、コーヒー豆が増えたわけではなく、豆以外のカビや水分が付着しただけです。

 コーヒーのカスを捨てないで、何度も使うという手もありますが、チューインガムを噛み続けているのと同じで、しまいには味も香りも失われてしまい、湯を飲んでいるのと同じことになります。

 思えばわれわれはコーヒー豆の煮汁を飲んでおり、いわば豆の甘い汁ならぬ苦い汁を吸っているのです。

 釈然(しゃくぜん)としないまま、今回、強盗に遭ったつもりで注文します。いつものようにコーヒー豆を送ってください。

 申し遅れましたが、先日の誕生日にタンクトップをいただき、ありがとうございました。タンクトップとセーラー服は一生着ることはないと思っていました。肩や二の腕に筋肉をつけて見せびらかすためのシャツなのに、サイズがXLと大きいためか、小生にも脂肪はついているにもかかわらず、なぜかよけいみすぼらしく見えます。謙虚だからでしょうか。次にお送りいただくときは、タンクトップの上に何か羽織るもの、シャネルのタキシードか革ジャンをお願いします。

 最後に老婆心(ろうばしん)から申し添え(もうしそえ)ます。小生にとって、貴兄はダイエットの先輩、否、ダイエット失敗の先輩です。年末年始はダイエットの大敵(たいてき)です。ふだんとは食べる物が変わります。種類が変われば量の調節も難しくなります。タコ焼きを1日10個食べていれば、寿司なら20貫、ピザならL2枚に相当すると決めつける危険性があります。

 しかも年末年始は特別な時間です。それをいいことに、食べすぎるばかりか、ふだん身体を酷使していないのに身体を休めようとします(休めるとよけい疲れます)。正月明けには、人間は小さいまま、身体が一回り大きくなり、XLのタンクトップでも入らなくなる恐れさえあります。くれぐれもご注意ください。

 ではよいお年をお迎えください。

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