「週刊文春」編集部 2023/06/10

西麻布(にしあざぶ)セレブ保育園トラブル 創立者リナ・ローズ氏とは何者なのか

「I also created from my crisis, a school for children. From my experience, everything I experienced, it came back to education」

(私は自分自身の危機を経て、子供たちのための学校を作りました。私が経験したことはすべて、教育に帰結したのです)

 壇上に立つリナ・ローズ氏(49)は、両手を腰の後ろで組み、流暢な(りゅうちょうな)英語で演説を続けた。動画の日付は2012年8月。米国の著名NPO「TED」が主催する、様々な分野の人物がプレゼンテーションを行うプログラムである。過去には、ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏らも登壇。そのスピーチの模様(もよう)は、全世界に配信される。

 そのリナ氏が今、大きな注目を集めている。きっかけは、5月30日に放送されたテレビ朝日「グッド!モーニング」。「独自(どくじ)」と銘打ち、都内の高級インターナショナルスクールが突如閉鎖、高額な年間授業料は返還されず、子供を通わせる保護者たちが困惑していることを伝えたのだ。このスクールの創設者こそ、冒頭のリナ氏だった。

「スクールは数年前から家賃を滞納(たいのう)していて、建物の所有会社とトラブルになっていたんです。裁判所の決定を経て、今年3月に明け渡しの強制執行が実施されました。いまスクールは機能していない状態です」(保護者の1人) 

 テレビ朝日の直撃取材を受けた当のリナ氏は「100%何も悪いことはしていません」と自信満々に答えているが、その後、日本を離れた。ワイドショー(wide+show)関係者が明かす。

「彼女はSNSでテレビ朝日の報道は捏造(ねつぞう)だとして訴訟をちらつかせています」

 いったい、何が起きているのか。

〈民事執行法に基づいて、明渡しの強制執行が実施〉

 リナ氏は、前身のスクールを経て、2015年、インターナショナルスクール「X」を、東京都港区西麻布の高級住宅街に開校した。校舎は地下(ちか)1階、地上(ちじょう)2階の建物。0歳から6歳まで約100人の子供が在籍する。厳密には認可外の保育施設であるが、会社経営者ら富裕層が我が子を通わせていたこのスクールは、英語や中国語など外国語教育に力を入れているとの触れ込みで、授業料をはじめ、ランチやスナック代、語学や音楽のレッスン料など、年間費用は約500万円にも達する。

 子供を通わせていた別の保護者が憤る(いきどおる)。

「3月17日、スクール側からメールが届いたんです。『安全上の理由で、今の場所は一時的に離れます。次の場所を見つけてあるので、3月20日からはそこに通いましょう』といった内容でした。その3月20日、スクールの建物に貼り出された衝撃的な内容が保護者の間で広まり、『いったい何が起きているんだ』と大騒ぎになったんです」

 貼り紙には、同日付でこう書かれていた。

〈民事執行法(みんじしっこうほう)に基づいて、明渡しの強制執行が実施されました〉

 ある日突然、通いなれたスクールがなくなってしまった――。説明を求める保護者たちに対して、スクール側は外国人の校長が「すぐに戻れる」「こちらは悪くない」と繰り返すばかりだったという。

「きちんとした回答がまったく得られない。そればかりか、このスクールでは、イジメやトラブルの原因になるとして、保護者同士が仲良くなることを禁じていたのですが、それを逆手(ぎゃくて)にとって、グループLINEを作って情報交換する保護者たちを責める始末でした」(同前)

 問題は、強制執行がなされる直前に、スクールが今年度の授業料を払い込ませていたことだ。

「どんなレッスンをつけるかにもよりますが、費用は1人あたり年間で400万円台から600万円台。いったんは移転場所で再開しましたが、そこからも追い出されたようで、今はスクールそのものがない状態です。ところが退学を決め、払い込んだ費用の返還を求めても、戻ってこないんです」(同前)

 現在、複数の保護者から相談を受けている加藤博太郎(かとう ひろたろう)弁護士が語る。

「今後は集団訴訟(そしょう)に発展するかもしれません。明け渡しの強制執行が決まっていながら、それを保護者たちに伝えず、高額な授業料等を新たに前払いで振り込ませているのは、極めて悪質といえます。警察に相談している保護者もいます」

 前述の通り、強制執行に至った発端は、スクール側による“家賃の未払い(みはらい)”だった。建物の所有会社の代理人弁護士によると、スクールは2016年7月分以降、月額230万円(税別)の家賃を滞納。所有会社は明渡請求訴訟(あけわたしせいきゅうそしょう)を提起する。そして2017年7月、スクールが同年11月末までに建物を明け渡す、明け渡しが完了するまで家賃の倍額相当の使用損害金を支払うといった内容で和解が成立している。

 ところが、スクールは期日を過ぎても立ち退かず(たちのかず)、しばらくは損害金を除いた(のぞいた)家賃相当額だけは支払いをしていたものの、2021年10月以降、今年3月の強制執行までの18カ月は、一切の支払いをしていなかったという。つまり、長らく建物は不法占有されていたことになる。

「建物所有者は、通っているお子様たちへの影響を考慮して、すぐに強制執行を申し立てるのではなく、スクール側に数回にわたって協議や調停等を申し入れました。しかし、応じていただけませんでした」(所有会社の代理人弁護士)

 明け渡しの強制執行を申し立てた翌月の2021年12月2日、東京地裁の執行官が、スクールに対して明け渡しの催告を行った。だが、スクール側も抵抗。2022年1月、強制執行に対する異議訴訟を提起した。結果は地裁高裁ともにスクール側の敗訴。すると、その直後からSNS上で所有会社の社員らに対する誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)が始まり、同じ内容のキャンペーンサイトも立ち上がったという。

「21年12月に東京地裁の執行官が催告をした際、スクール側が公務を阻もう(はばもう)と抵抗したため、3月20日の強制執行の時は、事前に東京地裁が所轄署(しょかつしょ)に要請し、警察官が同行する中で、実施されました」(同前)

 その日、踏み入った建物の中は、床や壁の至るところに代理人弁護士を中傷するビラが貼られていた。

 しかも、未払いだったのは建物の家賃だけではなかった。前出の加藤弁護士が明かす。

「返金を求める保護者との交渉の中で、授業料の振り込み先になっていたリナ氏の関連会社の代理人弁護士から、今年4月、代理人を辞任した旨の通知が届いたのです。リナ氏の関連会社の担当者が、事実関係の確認に応答せず(おうとうせず)、弁護士費用の支払いもないことが理由に挙げられていました」

プラダへの告発でメディアの寵児(ちょうじ)に

 そもそも、このスクールを立ち上げたリナ氏とは、どんな人物なのか。

 彼女が一躍時(いちやくじ)の人となったのは、2010年のことだ。前年4月からイタリアの高級ブランド「プラダ」の日本法人「プラダジャパン」にて、シニアリテールマネージャーとして勤務していたリナ氏。上司からハラスメントを受けた上、不当に懲戒解雇されたとして、同社を相手取って、解雇無効の確認と慰謝料の支払いを求める訴え(うったえ)を東京地裁に起こしたのだ。

 リナ氏はプラダジャパンを解雇される同年3月の中旬以降、メディアのインタビューに積極的に応じていた。同年4月には、外国人記者クラブで会見を開く。今もその際の彼女の様子が、時事通信のフォトアーカイブなどに残されている。

「私は社長や上司から『髪型を変えろ』『痩せろ』『醜さが恥ずかしいからイタリアからの訪問者には会わせたくない』と言われた」、「プラダジャパンは、私がハラスメントをプラダ本社に報告したことを理由に、解雇すると言ってきた」、「プラダジャパンは従業員に対して、自費(じひ)で自社商品を購入するよう強要している」……。

 世界的有名企業にはびこる深刻な人権侵害と、それに毅然と立ち向かう女性――。新聞、雑誌、テレビの各媒体が、リナ氏をジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)のごとく扱い、その戦いをこぞって取り上げた。ジャパンタイムズ、デイリー・テレグラフ、AERA、テレビ朝日、フジテレビなどだ。フランスの有名雑誌「ELLE」も2010年4月に「今週の女性」という記事でリナ氏を紹介。プラダに対して声を上げたことを称賛し、アジア人女性にとってのスターだと伝えた。翌2011年6月、リナ氏は香港証券取引所に上場したばかりのプラダに対する上場反対運動にも参加。香港の女性団体代表らとともに記者会見を行い、世界に配信された。

 だが、1年4カ月後――。

 2012年10月26日。東京地裁はリナ氏の請求をいずれも棄却(ききゃく)した。全面的な敗訴(敗訴)だった。判決記録によれば、リナ氏の懲戒解雇が有効と認められたのには、会社が従業員に対して自社商品の購入を強制したかのような証拠を捏造したことや、上司によるセクハラやパワハラなど虚偽(きょぎ)の報告したことなど、複数の理由が挙げられた。懲戒解雇の直前、マスコミに虚偽の情報を提供したことも、その一つ。

〈このタイミングでの原告のマスメディアに対する情報提供の主たる目的が、被告会社(編集部注:プラダジャパン)の業務改善等の公益目的であったと認めることはできず、むしろ、自己の立場を有利するため世論を味方に付けようという目的であったとみるのが相当である〉(判決より)

 シャネルにも在籍したことのあるリナ氏は、競合ブランドであるシャネルの商品を身に着けて度々プラダの職場に出勤し、注意を受けていたという。

 一方、プラダジャパン側は、リナ氏が企業のイメージを大きく損ねたとして、慰謝料など3300万円を求めて東京地裁に反訴。2013年11月12日、リナ氏に計330万円の支払い命じる判決が下された。上記のメディア出演などでリナ氏が主張した内容は、ことごとくプラダジャパンの名誉を毀損していると認定されたのだった。

ユナイテッドアローズ名誉会長の証言

 リナ氏の本名は高桑里奈(たかくわ りな)。過去のインタビュー等によれば、1974年1月生まれ、東京都出身。裁判記録にある本人による略歴は〈日本のインターナショナルスクール(小学校に相当)卒業後海外で教育を受け、ニューヨーク、東京及びホノルルで稼働く(??)した後、被告会社(編集部注:プラダジャパン)に入社した〉とある。

 だが調べてみると、幼少期を過ごしたのは、愛知県名古屋市だ。地元の公立小学校で同級生だった女性が振り返る。

「一人っ子で、意思がハッキリしている子でした。気に入らないこと、納得いかないことがあると、とことん反論するところは、その頃から変わらない気がします。地元の公立中学校に進み、その後、海外にいったようです」

 小学校の卒業アルバムを見せてもらうと、確かに6年3組に面影のあるその顔が確認できた。卒業文集には座右の銘(ざゆうのめい)なのか、「情熱」という言葉を書き残している。

 近隣住民はこう言う。

「確かに、娘さんは十代で海外留学されていたようです。お父さんは電気関係の会社のお偉いさんだと聞きました。お母さんが20年ほど前に亡くなり、昨年、実家のあった場所は売却して、東京と行き来していたお父さんも、越していきました」

 海外居住時代、リナ氏はフランス人男性との間に男児を儲けた(もうけた)。帰国後、プラダ裁判を経て、リナ氏が次に目指したのは、冒頭の発言にもあるように、理想の学校作りだった。

 リナ氏が西麻布にスクールを開校するにあたり、後ろ盾となったのが、東証プライム上場企業でセレクトショップの最大手「ユナイテッドアローズ」創業社長の重松理氏(しげまつおさむ 現名誉会長)だったという。2015年5月、ファッション系情報サイトは、アパレル業界の大物(おおもの)である重松氏が同校の「株主として参画している」と伝えている。入学を決めるにあたって、同氏の名前が信用を担保したと話す保護者もいた。

 だが、重松氏に直接会って経緯を聞いてみると――。

「出資(しゅっし)はしていません。そうすると、経営に関わらなきゃいけなくなるから。知人の紹介で、子供たちのためになるならと、貸し付けをしたのは事実ですが、その後、その女性側とは裁判になりましてね。勝訴はしましたが、(お金は)戻ってきていません。あの人はとんでもないね」

 当初支援者だったはずの重松氏も、今やリナ氏への失望を苦々しそうに嘆くのだ。

リナ氏の反論

 リナ氏の知人の1人は、彼女の人柄をこう説明する。

「リナさんはとても不思議な人で、破天荒(はてんこう)なんですが、いざプレゼンを始めると、虹がかかったように人を魅了するパワーがある。普段はとても女性らしくて甘え上手。ただ、スイッチが入ると、人が変わったようになります。自分が攻撃されたと感じた瞬間から、百倍返しに転じるんです」

 過去の保護者の中にも、途中で子供を退学させたが授業料が返還されず、裁判沙汰になったケースは複数ある。

「民事裁判をした際、こちらは規約など複数の証拠を提出し、最終的に返金されることで和解しました。ですが、スクール側は『お金がないから払えない』といい、返金はされていません」(以前子どもを通わせていた保護者の1人)

 リナ氏側は、スクールの運営会社の名称を度々変えており、口座を差し押さえても、ほとんどお金が残っていなかったという。明け渡しの強制執行が迫る今年2月には、スクール費用の振込先に指定された会社の代表者を、リナ氏は自身から、16歳になる息子に変更。ちなみに、かつて日本で芸能活動をしていたこともある息子は、世界中から王族や富豪が集まるスイスの寄宿学校「ル・ロゼ学院」に通っているという。年間の学費が現在のレートで2000万円を超えるセレブスクールである。

 また、元スタッフの1人はこう打ち明ける。

「いったん敵視すると、訴訟をチラつかせながら、周囲を巻き込んで相手がいかに悪いかをまくし立ててる。そうやって恐怖を植え付けて相手の声を封じるのがリナさんの手法なんです。『もう関わりたくない』と怯えている人は、他にも多くいます。『彼女の口の中にあるのは、舌ではなく刃だ』と評した人も。実際に彼女と関わった日々はトラウマでしかありません」

 スイスにいるリナ氏にメールで取材を申し込むと、8000字を超える長文の反論が寄せられた。順にその主張を紹介していこう(以下、〈 〉内はリナ氏のメールより)。

 リナ氏は自身を〈社会的におかしいと思うことをすべてを犠牲にして最後まで戦い社会改善をする活動家〉と規定する。そして、問題となった西麻布のスクールの強制執行の経緯について、こう主張した。

〈(家賃の滞納や未払いは)一切ありません。これが「エリート弁護士の違約金詐欺」で、違約金目的で、お家賃の未払いもなく、お家賃を毎月お支払いしていたところ強制執行を何度も送ってきて違約金(2億円)、強制執行停止申立担保金(5000万円)、敷金を取られ追い出された〉。

 つまり、弁護士たちが一方的に「違約金を払え」と迫る詐欺事件だと訴える。なお、建物の所有会社の代理人弁護士によると、所有会社や社員への誹謗中傷が書き込まれたSNSやサイトに関しては、スクール側に対して、所有会社の本部があるスイスの裁判所より閉鎖を命じる決定が出されているが、今もそれは果たされていないという。

 リナ氏側が弁護士費用を支払わなかったため、代理人が辞任したことについて、リナ氏は、強制執行の事件が終わってから支払いをするかたちで最初から話はついていたと主張。代理人弁護士が辞任したのは、

〈事件の途中で精神不安定になり心が折れ、弁護士の先生が明け渡しの直前に逃げてしまったからです〉

 そして、リナ氏の存在が大きく注目されたプラダ裁判について。

〈プラダ事件はスタッフを助けようとしたところ日本の働く女性の環境がひどいことを知り、シャネル10年のキャリア、ファッション業界の18年のキャリアをすべて犠牲にして日本とファッション業界の働く女性の人権を国連にカウンターレポートして日本政府に法を変える勧告を出していただいています〉

〈プラダの事件はプラダが名誉毀損で訴え330万円請求が当時ありましたが、プラダの当時のイタリアのChairmanが請求しなくて良い、で終わり、なぜなら国連から勧告が出され、名誉毀損で訴えたのはセクハラ被害者に対する脅迫行為とされた理由からです〉

 日本でくだされた判決内容とはかみ合わないが、いずれにしても、330万円の支払い命令が履行されていないのは事実のようだ。

 裁判の経過について、改めてプラダジャパンに問い合わせると、こう回答した。

「個別の事案についての回答は差し控えたいと考えます」(広報担当)

 ユナイテッドアローズの重松氏とのトラブルに関しては、騙されたのはスクール側だと主張する。

〈社会貢献の目的で賛同したいとのお話で、プレスリリースなども社会貢献目的で発信したのに、パンデミックになり収入がゼロになったとのことで「生活ができなくなり苦しんでいる」とスクールへお話に来られ、弁護士の方達が「社会貢献ではなくローンだった、寄付のつもりもない、遅延損害金を払え」と請求してきた、というのが事実です〉

 だが、重松氏の代理人は、あらためて以下のように経緯を回答している。

「重松氏は2012年頃、知人からリナ氏を紹介され、当時リナ氏が開設しようとしていたインターナショナルスクールの構想や教育方針の説明を受け、何か子供の教育等に役立つことができればとの思いで、同インターナショナルスクールの運営会社に対し資金を貸し付けました。貸し付けを行ってはおりますが、同社に対する出資はしておらず、同社の経営にも一切関与しておりません。その後、重松氏の同社に対する貸付金は、一部の返済がなされたのみで、相当長期間にわたって返済がなされない状態が継続したため、貸付金の返還を求める訴訟を提起するに至り、勝訴判決を得ましたが、現在に至るまで貸付金の多くは返済されないままとなっております。なお、金額等の詳細につきましては、個人的な貸付けに関する問題であることもあり、コメントは差し控えさせていただきます」

 そして、授業料等の返金を求める保護者たちの嘆きや憤りの声は、〈ネガティブグループ〉による嘘や捏造と一括りにするのである。

 しかし、明け渡しの強制執行やプラダ訴訟、重松氏をはじめ複数人との金銭トラブルでは、いずれも正当な手続きに則って裁判が行われ、リナ氏側の主張は裁判所によって退けられている。前述の保護者のように、裁判で和解に至っても、約束が果たされていないケースもある。

 リナ氏は司法の判断をどう受け止めているのか。

〈日本の裁判所はとても病んでいると思います。裁判官は鬱の方が多く、現在の日本の裁判所に正義や誠実な判決はないです〉

 出身地については「実家は東京都港区の麻布」と強調し、経歴についてこう明かす。

〈名古屋にも実家はありましたが出産のみ名古屋に亡くなった母が戻り、母がわたしを産んだ直後、麻布に戻り麻布で育てられ、途中から名古屋、12歳でカリフォルニアに行き、帰国、14歳で家を出てアメリカにひとりで渡航、帰国、インターナショナルスクールに戻り、16歳でアメリカに永久にひとりで移住しています〉

〈名古屋についてお話をしない理由は、家を出た時の親戚とのお約束で、親戚とは関係ない名古屋は出さないと約束をさせられ縁を切っているため言えないです。わたしは外人、という扱いだからです。閉鎖的な理由もありわたしは名古屋につながりがありません〉

 名古屋の近隣住民や同級生の証言、卒業アルバムなどとは話がかみ合わないのだ。

 冒頭で紹介したスピーチは、リナ氏の次の言葉で締めくくられている。

「It’s really all about changing your crisis, set yourself to zero and look at it as chance of your life and create something new out of your crisis. And this is my philosophy of power of positive」

(自分の危機を変えること、自分をゼロにすること、そしてそれを人生のチャンスと捉え、危機から新しいものを作り出すこと。これが私の“ポジティブパワー”の哲学です)

 スピーチ動画のタイトルは、power of positiveの頭文字を取った“Pop”。この危機も、リナ氏は“ポジティブパワー”で乗り切るつもりなのだろうか。