「週刊文春」編集部 2023/07/05
香川照之は面会で型を演じ…猿之助を待つ再逮捕と懲役3年
措置入院していた閉鎖病棟から留置場に居を移し、1週間余りが過ぎた市川猿之助(いちがわ えんのすけ、47)。これから彼と一門を待ち受けるのは――。
父・段四郎(享年76)と母・延子さん(享年75)の死から40日後の6月27日、警視庁は延子さんに対する自殺幇助(じさつほうじょ)容疑で猿之助を逮捕した。
伝統芸能界の大物(おおもの)の事件だけに検察庁は警察に対し、死に至る細かいプロセスの裏付けを求めてきた。その1つがビニール袋の存在。猿之助はこう供述している。
「家族会議で楽に心中する方法として睡眠薬を飲み、眠った後にビニール袋を使うことが決まった。ビニール袋(びにーるぶくろ)を両親の顔にかぶせ、養生テープ( masking tape)で止めた。動かなくなった後にそれを取り外し、袋や薬の容器は外のごみ集積所に捨てた」
死を早めた可能性のある証拠物(しょうこぶつ)を捨てたというのだ。
「逮捕後、猿之助はこうした“証拠隠滅”や薬の提供など、積極的な関与を窺わせる供述をしており、情状面でも決して良くない印象です」(社会部記者)
元警察官僚の澤井康生(さわい やすお)弁護士が見通しを分析する。
「母への容疑で20日間の勾留期間が満期になれば、次は父に対する自殺幇助などの容疑で再逮捕されるでしょう。その場合、2件の罪で起訴されます」
自殺幇助を含む刑法202条の刑罰の上限は懲役7年。ただ2件の「併合罪(へいごうざい)」は上限が1.5倍となり、より重い判決が想定される。
「通常、自殺幇助罪は執行猶予が付き、懲役1〜2年の判決も多い。ただ今回は併合になる上、動機が自身への『女性セブン』の報道であれば、両親を巻き込んだことに酌むべき情状の材料はない。よって、懲役3年を超える実刑判決となる可能性もあります」(同前)
梨園への復帰は絶望的となり、猿之助が当主を務めていた澤瀉屋(おもだかや)には衝撃が走った。幹部は逮捕直後、ミーティングを開いたという。
「すぐには戻れないとはっきりした今、立て直しを本格的に考えなくてはいけなくなった」(澤瀉屋関係者)
その中心となるべき存在が、九代目市川中車(いちかわ ちゅうしゃ))こと香川照之(57)だ。
「香川さんは段四郎の兄で『スーパー歌舞伎』の創始者、二代目市川猿翁(えんおう、83)の長男。『自分が引っ張る』と奮起し、重圧で一時激ヤセしました。7月3日に始まった猿之助さんの代役公演では、澤瀉屋のお家芸である『宙乗り』にも初挑戦している」(同前)
小誌は先週号で香川が逮捕前の猿之助と面会した事実を報じた。実はこの時、香川は虚ろ(うつろ)な猿之助の眼前で、おもむろに腰を落として手を振り上げたという。
「病室で歌舞伎の『型』を演じて見せたというのです。座頭(ざがしら)を引き継ぐ決意をアピールしたのでしょう」(同前)
だが梨園入りしてまだ10年余りの香川。その力量のほどに冷静な声もある。松竹関係者が腕を組んで言う。
「中車は両親の離婚で猿翁に見捨てられたこともあり、梨園で育っていない。今は観客の同情で声援もあるが、技術的には踊りもできず、自分で何かやる引き出しもない。6月の公演でもテレビ的な笑いに走っていた」
澤瀉屋の芸の継承についても、松竹内では現実路線の議論が始まっている。
「歌舞伎興行の本音として、三代目猿之助(猿翁)が作った派手な『スーパー歌舞伎』の『ヤマトタケル』などは別格の古典として残したい。でも四代目の『ワンピース』などは通俗的すぎて、言い方は悪いが“使い捨て”です。だから無理な復帰論は必要ない。今後は実力不足の中車を誰が指導するかなどを現実的に考えないと」(同前)
そこで“希望の光”と期待されるのが香川の長男・五代目市川團子(19)だ。しかし彼は猿之助の逮捕に意外な反応を見せた。意気消沈する澤瀉屋のメンバーに対して、こう言ったのだ。
猿之助(左)は香川の後ろ盾でもあった
- 香川照之の長男香川団子(かがわだんご)