THIS WEEK「政治」 「週刊文春」編集部 2023/11/30
国民・前原誠司が「誤報です」離党報道に猛反発した理由
11月24日朝、各全国紙のチェックを終えた政治部記者が驚いたのは、X(旧ツイッター)を開いた時のことだ。
国民民主党の前原誠司(まえはら せいじ)代表代行(61)が「補正予算の賛否を理由に、重大な政治決断をすることはありません。本人に確認することなく、この様な記事を書くとは。誤報です!(誠)」と怒りの投稿をしていた。
前原氏が引用していたのは、地元の京都新聞。同日に採決される補正予算案に国民民主が賛成すれば離党する意向を関係者に伝えたという内容だった。
「誤報だと当人が投稿したので、抜かれたわけではないとひとまずホッとした。前原氏はイライラを募らせた様子で、各社の囲み取材を拒否。だが、取材を重ねると強ち(あながち)誤報でもないことが分かった」(前出・記者)
前原氏は9月の代表選で玉木雄一郎氏に敗れてから、離党の準備を進めてきた。
前原氏の側近によると、行動を共にしようとしているのは、前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員、前原氏の元秘書の斎藤アレックス衆院議員をはじめ、5〜6名だという。
「前原氏は至る所で新党構想を話しており、表面化するのも必然。新党をつくった後に、日本維新の会に合流するのが筋書きだった」(前出・側近)
それなのに、なぜ、前原氏は報道に怒ったのか。
「京都新聞は離党の条件を、『補正予算案に賛成すれば』と報じた。しかし、維新がすでに補正に賛成する方針を決めており、維新に合流すればダブルスタンダードの誹り(そしり)は免れない。だから猛反発した『ふり』をするしかなかった」(同前)
もはや打つ手がないように見える前原氏だが、自民党から秋波(しゅう‐は)が送られている。
「かねてから自民党は前原氏の選挙区に対抗馬(たいこうば)を立てようとしているが、前原氏が強すぎて誰も立とうとしない。地元外から公募しようとしても、前原氏と親しい自民府議や京都市議が妨害するため、なかなか有力な候補が集まらなかった」(自民党京都府連)
府連会長の西田昌司参院議員は何度も前原氏に自民入りを求めるが、前原氏は「細野の二の舞にはならない」と拒む。環境相や民主党幹事長を歴任し、野党ながら華麗な経歴の細野豪志氏(ほその ごうし)は2021年に自民入りするも、要職に就けず、存在感を示せていない。前原氏は自民による都合のいい囲い込みを警戒しているのだ。
古くは民主党代表時代のガセメール事件、民進党代表の17年には小池百合子氏の希望の党との合流をはかるも、小池氏の「排除」発言で計画は頓挫。これまで前原氏は政局感の無さを何度も露呈(ろてい)してきた。
次こそラストチャンスかもしれない。